ある少年の猫カフェ②
「てめえらっ、なにしてやがんだ!!」
土手を一気に駆け下りて叫ぶと、男らは一瞬たじろいで逃げる様子を見せた。だが、相手が同じ高校生の俺1人と解ると、途端に、舐めた顔でゲラゲラ笑い始める。きっと人数をかさに着て、俺なんてどうとでも出来ると考えたんだろう。
実際、相手は3人だ。普通に考えたら敵うはずもない。
ただ俺は自分で言うのもなんだが、ある事情から多少は喧嘩慣れしていた。
まあ、自慢出来ることでもなんでもないけれど。
土手を駆け下りた俺は、男らと話をする無駄は省いた。
正確に言うと奴らの1人が手にした木の棒(紐じゃなかった)の先で、水に濡れてぐったりした仔猫の姿を見た瞬間、頭が真っ白になって口より先に手が出ていたのだ。
そんな問答無用の先制攻撃のお陰で、なんとか3人の男らを撃退することが出来た。と言っても、ご覧の通り、まったくの無傷という訳には行かなかったけれど。
「何をしてるんだ!!お前達!?」
ちなみに状況を少し補足しておくと、奴らが俺に反撃せず逃げ散ったのは、巡回中の警官の怒声が聞こえたから、でもある。そう『顔馴染みの駐在さん』こと、佐野正義巡査部長だ。
「またお前か……おい、大丈夫か?」
「俺とこいつは、な……」
男らから奪い取った木の棒の先から、ずぶ濡れの仔猫を救い出してやるが、俺は、すぐ側の茂みにあるものを見つけて息をのんだ。おっさんもそれを見て、痛々し気に眉をひそめてしまう。
「逃げた高校生らには見覚えがある…あとは、わしに任せておけ」
「…………くそっ」
俺がもっと早く見つけていれば。
もっと早くに、この道を通りかかっていれば。
そんな、考えてもどうにもならない後悔に苛まれる。
「ごめんな……」
時が戻せれば。
漫画や小説みたいにタイムスリップ出来たなら。
きっと、お前たちのことも助けられたのに。
次々と込み上げてくる想いに、胸が痛みと怒りで張り裂けそうだった。
「せめて丁重に葬ってやろうな…」
「……………ッ」
おっさんは腰をかがめて手を合わせる。
その視線の先には3匹の動かなくなった小さな毛玉。
俺の手の中でぐったりした仔猫と似た柄の、仔猫らの無残な遺骸が打ち捨てられていた。




