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ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました!〜  作者: 鳥柄ささみ


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第三十四話 仕置き

「ダメに決まってるだろう!」

「ヴィル?」


 ヴィルに強く腕を引かれて振り向いた。

 すると、ヴィルのほうに向くように頬を両手で固定されて見つめ合う。


「魔王と結婚するだなんて何を考えているんだ……っ! シオンはこの前言ってただろう!? 誰彼構わず好きになるんじゃなくて、ちゃんとシオンのことを大事にしてくれる相手と結婚するんだって!」

「え、うん、まぁ、そう……だけど。でも、もしかしたら私が魔王のこと更生させてあげられるかもしれないし……そしたら……」

「いやいやいやいや、どうしてそこで前向きになるんだ。どう考えたって無理だろ! 相手は魔王なんだぞ!?」

「でも、人を偏見で判断するのもよくないし……?」

「シオンの目は節穴か!? どう考えたってヤツはシオンのことが好きで求婚してるわけじゃないだろ! それに、オレにもわかるほどこいつは禍々しい気を発してるじゃないか!!」


 言われて魔王を見れば、確かに先程とは違って邪気を孕んだ魔力が帯びているのがわかる。触れただけで周りの草木などが朽ち果ててしまうほど、禍々しい魔力だった。


「おや、心外だなぁ。これでも彼女のことを愛しているというのに。人間界には一目惚れっていう言葉もあるじゃないか」

「煩い! お前なんかにシオンの何がわかる!? いきなり彼女と結婚だなんて……」

「黙れ、小僧」


 ダンッ!!


「かはっ!」

「ヴィル!?」


 ヴィルの身体が宙に浮いたかと思えば、そのまま地面に叩きつけられる。一瞬の出来事で反応すらできなかった。

 あまりの速さにヴィルは受け身すら取ることもできなかったらしく、そのまま背中を強打してしまい、身動きが取れないのか倒れたまま動かない。


「ヴィル!? ちょっと、ヴィルに何をするの!」

「何って……僕のプロポーズの邪魔をしたのだから仕置きだよ。悪い子には罰を与えなくちゃ、だろう?」

「罰ですって……?」


 さも当たり前かのように言ってのける魔王。その笑みは邪悪を帯びていて、あまりの禍々しさに冷や汗が出てくる。


「それに禍々しい気だなんだと言うけど、僕はシオンが欲しいだけで、シオン以外はいらないだけだよ。こんな魔力がカスなヤツら、生きていたってしょうがないからね」

「何よ、それ……」


 イケメンだけど、どう考えてもサイコパス。さすがにそれは私も守備範囲外だ。


 魔王だけあって、倫理観ぶっ壊れてるっぽいなこれ。聖女として更生させたい気もするけど、この様子じゃ一筋縄ではいかなそう。

 というか、魔力量も凄いけど、何よりプレッシャーが半端ない……!


 シュド=メルなんて比じゃないほどのプレッシャー。だんだんと威力が増していて、立っているのすらやっとの状態だった。

 周りを見ると村人達は邪気に当てられたせいか皆次々と倒れていく。グルーは魔物なせいもあって、魔力に干渉されたらしく魔物本来の凶暴さが顔を出しそうになっていた。


 さすがにこのままここでやり合うのはマズい!


「癒しを与えよ。邪気を払えよ。ここにいる者全てを正常へと戻せ! リカバリー!!」


 パンッと手を叩いて全体に状態異常解除の魔法をかける。


「あれ、ここは?」

「何がどうなって……」

「グルー! 村人達を村の外に移動させるから彼らを守って!」

「おぉ、わかった!」


 村人達の洗脳を解くと、すかさずグルーに指示を出す。

 私は再びパンッと大きく手の平を叩くとそのまま村人全員を村の外へと避難させ、グルーもそれに合わせて外へ向かった。


「ほう。やるね。さすが僕が見込んだだけはある」

「それはどうも。でも、いくらイケメンだからってやっていいことと悪いことがあるのよ! イケメン無罪というわけにはいかないからね!!」

「それは残念だ」


 魔王が手を振ると、ヴィルのほうに向かってかまいたちが起きる。すかさずパチンと指を鳴らしてショックウェーブを当てると、相殺されてかまいたちは消えてなくなった。


「ふぅん、相打ちか。面白い」

「ヴィル、大丈夫!?」


 パチン、と指を鳴らして回復するとヴィルが唸りながら身体を動かし始めた。


「ヴィル!」

「させないよ」


 ヴィルのところへ駆け寄ろうとするも、そのままヴィルの身体は宙へと浮かぶ。魔法で拘束されているからか、苦悶の表情を浮かべていた。


「ヴィルを離しなさい!」

「嫌だと言ったら?」

「力づくで奪い取るまでよ!」


 ダッと地を蹴って魔王に近づく。そして片手剣を魔法で作り、魔王に斬りかかった。


 ガキンッ


 振り上げた剣は軽く防がれる。そして腕を掴まれたかと思えば、そのまま魔王に引き寄せられた。


「威勢はいいようだね。うんうん、ますます僕の好みだ。キミの力があれば、この世界を意のままに操ることも可能だよ? ねぇ、自分達の世界ってとっても魅力的だと思わないかい?」


 美声で囁かれていつもならキュンキュンとなってしまうが、それよりもヴィルを助けたい気持ちの方がまさっていた。

 けれど、魔王の力が強く、いつもなら簡単に抜けられるはずなのに、魔王の手から抜けることが全然できない。


「私は今の世界を気に入ってるの。だから魅力的にも思わないし、貴方の言うことなんか聞かない!」

「おや、さっきまでは僕の言葉に耳を傾けてくれたというのに。シオンは僕の顔が好きなんだろう?」

「好きよ! 好きだけど、大事な人を傷つけるのは許せない!!」

「ふふ、正直だね。なら、そのまま素直になっちゃえばいいのに」


 唇を重ねられそうになって、慌てて口を押さえる。キョトンとした顔の魔王。今がチャンスだと、私は早口で詠唱をした。


「万物を司る大地よ大気よ水よ炎よ。今ここで一つになりて爆ぜよ! エクスプロージョン!!」


 ドッカーーーーーーーン!!


 至近距離での爆発に、さすがの魔王も避けきれなかったと思ったときだった。


「随分と熱烈な魔法だね。そういう反抗的な態度も嫌いじゃないよ」

「え、嘘。効いて、ない……?」


 確かに当たったはずなのに。感触はあったはずと思い返すも、魔王の身体にはどこにも傷一つすらなかった。


「ふふふ、そんな表情をするシオンも可愛いね」

「ふざけないで!」

「ふざけてなんていないさ。僕はいつでも真剣だよ。さぁ、おいで。キミの実力を見せてくれ」

「そんなに言うなら見せてあげるわよ!」


 パチンと指を鳴らして魔力制限を一部解除する。


「おや、そんな微々たる解除でいいのかい? シオンはもっと力が出せるだろう? それとも、僕を侮っているのかな?」

「全部出したら村ごと吹っ飛ばしちゃうでしょうが!」

「ふむ。なるほど。そういうことか」


 実際先日のように魔力を全部解除したら村ごと吹っ飛ぶ。前回は都市自体が崩壊していたから気兼ねなく好き勝手大暴れしたが、こんな小さな村で本気の戦闘などしたら一瞬で崩壊してしまうだろう。


「よし、やめた」

「はぁ!?」

「一旦ここは引こう。僕は本気のシオンが見たいからね」


 言いながら浮遊する魔王。なぜかヴィルも引き連れて。


「ちょ、ヴィルをどこに連れて行く気!?」

「あぁ、人質ってヤツだよ。僕の城へ連れて行く。こうでもしないとシオンは僕のところへ来てくれないだろ? だから、僕の城に来て。そこでキミの本気を見せてくれ」

「城に来いって場所どこよ!?」

「さっきシオンが連れてた魔物が僕の城の場所を知ってるはずだよ。ふふ、楽しみにしてる。あぁ、あとそこの村はもう飽きたからもういらないや。ということで、またね」

「待ちなさいよ!」


 すぐに追いかけようとしたが、魔王が私のように指をパチンと鳴らすと頭上に巨大な渦が出現したかと思えば、中から隕石が現れる。


「シオンが来るのを待ってるよ。それじゃ、頑張ってね」

「はぁぁぁぁぁ!??」


 にっこり微笑むとそのままヴィルを連れて飛び去る魔王。鬼畜すぎる。


「シオン! あれはなんじゃ!?」

「なんじゃも何もないわよ! しいて言うなら魔王の置き土産!」

「なんじゃと!? ヴィルは?」

「連れていかれた!」

「なんと!? ど、ど、ど、どうするんじゃ、あれ」

「つべこべ言わずにやるしかないでしょ! 私があれを砕いてぶっ潰すから、グルーは破片が村人達に当たらないように守ってあげて!」


 戻ってくるなり慌てふためいてるグルーに指示を飛ばすと、思いきり腕を捲る。

 そして足をしっかりと地につけてから、私は詠唱を始めた。

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