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ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました!〜  作者: 鳥柄ささみ


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第二十五話 反動

「ん……あれ、私……?」


 目が覚めると見知らぬ天井だった。見回すと、どうやらどこかの家らしい。

 身体を動かそうにも今まで感じたことがないほど重く感じて、節々も痛い。

 ついでに頭も痛いし、身体も燃えるように熱くて、なぜか胸も圧迫されているように苦しくて、息も絶え絶えだ。

 正直、死にそうなくらいつらい。こんなことは初めてだった。


 あー、私シュド=メルを倒して、それからどうしたんだっけ?


 最後の記憶は私を見てクシャっと泣きそうな表情をしていたヴィルの顔。そこから全く記憶はない。


 あー、私ぶっ倒れたのか。それで誰かがここまで運んでくれたのか。


 回らない頭で現状を推測する。


 てか、私が使い物にならない状態でヴィルとグルーのみのパーティーはきっと大変だっただろうな。なんだかんだでこの旅仕切ってたの私だし。

 まぁ、でもヴィルだけじゃなくてグルーもいたからどうにかなったかな。


 意識を失ったときのことをあれやこれやと考えていると、不意に「シオン!!」とヴィルの声が聞こえてそちらを向いた。


「おー、ヴィル〜……ぐぇっ」


 ヴィルが思いきり抱きつくようにのしかかってきて、カエルが潰れたような声が漏れる。するとすぐさまヴィルは離れてくれたが、その目には薄らと涙が滲んでいた。


「この……バカヤロウッ!!」

「起きて早々に罵倒って酷くない?」


 起き抜けにバカヤロウはどうなのか。いくら王子と言えども失礼じゃなかろうか。


「シオンは無理しすぎなんだ! こっちは心配したんだぞ!! 三日も寝たきりで!!」

「え、三日も私寝てたの?」


 体感的には半日くらいだったが、まさかの三日も寝込んでいたことに驚く。しかも三日寝てたはずなのに体力その他が戻ってないことにも驚いた。

 まだ若いと思っていたつもりだが、思いのほか若くなかったのかとちょっとショックを受ける。


「本当に死んだかと思ったんだぞ……バカ」

「ごめん。そんなにしょんぼりしないでよ」

「しょんぼりしてないっ。ただ、シオンが生きててよかったと思っただけだ」


 ベッドサイドの椅子に腰掛けて項垂れるヴィルの頭を撫でる。以前触ったときに比べて髪に艶がない気がする。疲労だろうか。それともストレスのせいだろうか。


「心配かけてごめんね」

「全くだ。こっちは生きた心地がしなかったんだぞ。シオンが倒れそうになったのを支えたら、体温はすごい下がってて氷みたいに冷えきっていたし、抱えたら異様な軽さだったし」

「え、私のこと持ち上げたの?」

「そりゃ、目の前で倒れられたらオレが抱きかかえて移動するしかないだろう。それに、思ったよりもシオンは軽かったしな」

「ちょっと、思ったよりってのは余計なんですけど」


 とりあえず重いと思われなかったことにホッとする。乙女にとっては男性から重いと思われるのは致命的だ。


「でも、ありがとう」

「ん」

「……はぁ、なんじゃなんじゃ。そこでぶちゅっとチューの一つでもせんのか?」

「「グルー!?」」


 呆れた声が聞こえてバッとそちらを向けば、目を半開きでこちらを見るグルーがいた。


「いたならもうちょっと存在感出してよ!」

「そうだぞ! びっくりするじゃないか!!」

「最初からおったが、シオンとヴィルが盛り上がってたもんじゃから、ワシが口出しするのも野暮じゃと大人しくしとったってのに、お主達と来たら……」

「いや、だから私とヴィルはそういうんじゃないってば。ねぇ、ヴィル?」

「あ、あぁ、そうだぞ。オレとシオンは別にただのパートナーというか、相棒というか」

「ま、そういうことにしてやってもいいがのう。で、シオン。体調はどうなんじゃ?」

「絶不調よ。全身痛いし、身体は熱いし、今にも死にそう」

「うむ。それだけ文句言えれば元気じゃな。ちなみにじゃが今の状況を簡単に言えば、魔力枯渇による副作用じゃ。魔力が元に戻るまで安静にしていることじゃな」


 グルー曰く、私は先日のシュド=メル討伐で魔力を使い果たしたことによる反動でぶっ倒れたらしい。今まですっからかんになるまで魔力を使ったことがなかったので知らなかったが、魔力がなくなると大抵の人は今回の私のように体調を崩すそうだ。

 特に私の場合は元々魔力が多かったせいで反動もそのぶん大きかったようで、こうして全身に痛みがあったり発熱したりと人よりも重症化してしまったらしい。


「なるほど。確かに心当たりが……」

「だから言ったじゃろう? 無理はするなと」

「いやぁ、まぁ、うん。正直自分でもそこまで頑張るつもりはなかったんだけど、変に意地になっちゃったっていうか」

「それがお主の悪いクセじゃな。シオンは万能ではないということじゃ」

「反省してます」

「そうじゃ、もっと反省せい。ヴィルは毎日毎日お主が目を覚ますまで世話をしてくれたんじゃからな。それはもう、甲斐甲斐しく……」

「グルー! そういうことは言わなくていい!」


 グルーに暴露されたせいか、顔を真っ赤にするヴィル。私がヴィルを向くと、さらに全身真っ赤に染まっていた。


「か、勘違いするなよ! オレはただ、シオンがいなくなったら旅が困るだろうと思って……っ」

「はいはい、わかってるわよ。別に他意がないことくらい。でも、ありがとね」

「お、おう」


 照れているのか俯くヴィル。ちょっと可愛い。


「そういえば、マダシは結局どうなったの?」

「都市は崩壊して全てがグチャグチャになってしまったから、全ての責任をヴィヴリタス家に負ってもらう形で納めた」

「なるほどね。まぁ、それが順当でしょうね」

「資産もまだ隠してあるようだったしな。都市の復興が彼らの償いになるだろう。あと、父さんにもきちんとその旨は報告してある」

「ありがとう。でも、不思議よね。魔物のこと隠したいならなぜ私のことを呼んだのかしら」

「あぁ、それについては前任の聖女を呼ぶつもりだったそうじゃ。高齢の聖女の魔力を喰って完全体になろうとしたのにシオンが来たもんだから慌てて計画を変更したらしい。だが、シオンが魔法を使わなくても強かったせいで全部計画が崩れただとかどうとか」

「なるほど、そういうことだったのね」


 ヴィルとグルーの説明に納得する。とりあえず、全て無事に解決できてよかったとホッとした。


「ヴィルもよかったわね、あのご令嬢に今後追いかけ回されずに済んで」

「そうだな。それに関してはシオンに感謝している」

「えー、それに関してだけ? 私結構頑張ったんですけどー?」

「そ、それも感謝はしているが、今回はさすがに無理をしすぎだと怒っているからな! それに関しては感謝しない!」

「もう、ヴィルは頑固なんだから。ま、いいけど。実際、もうここまで働くのは懲り懲りって思ったし」


 ある意味自分の限界を知れたいい機会ではあったが、さすがにこれほどまでの苦痛を味わうのはもう勘弁なので、今後は極限まで頑張るのはやめようと私は心に誓ったのだった。

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