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ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました!〜  作者: 鳥柄ささみ


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第十九話 謎

「でも、それほどの資産家なのに男爵令嬢って珍しいわね。爵位に詳しいほうではないけど、そういうのってもっと高い位になるんじゃないの?」

「あー、それなんだが彼女達の家がここまで急成長したのはここ数年の話なんだ」

「……はぁ? え、ちょっと待ってよ。どういうこと? ここ数年? 数十年の間違いじゃなく?」


 理解ができなくて混乱する。それほどの資産家が降って湧くものなのか。いや、一般的に考えてありえないだろう。

 しかも運河を扱って財をなしているというならなおさらだ。どう見たってこの運河を使った流通網はそんな数年規模のものではないのは素人目から見てもわかる。


「あぁ。そう思うのも無理はないが、この運河ができたのは確かに数年前。突然のことに当時は誰もが混乱して原因や真実の解明などが騒がれたが、利便さや収益性などからうやむやになってしまったんだ」

「何それ。めちゃくちゃ怪しいやつじゃない!」


 突然、男爵家が「我が家がこの運河を作りました!」ってなって、おかしいと思わないものなのか。普通は思うと思うんだけど。え、私の常識がおかしいとかそういうんじゃないよね。


 ちょっと自分の常識が信じられなくなってくる。


「元々この都市はそこまで規模は大きくなかったんだが、この運河のおかげで年々人口が増えてここまで発展したということもあって誰も口出ししなかったらしい」

「それは王家の権限でどうにかできなかったの? そんな奇怪なことがあったら普通は調査するでしょ」

「普通はな。だが、そういう声が上がってもすぐにうやむやになることが多くてな。王家でも問題提起されたが、結局現状維持になっていることも考えると、恐らくその辺も含めてシオンに調査してほしいとのことだと思う」

「あー……なるほど。一応この旅って私が結婚しても聖女を続けられるかどうかの証左のための課題だったものね」

「そういうことだ。父さんはそういうとこは策士だから」


 なるほど、聖女の結婚は簡単には認めさせないということね。

 考えてみたらどれもこれも簡単そうに見えてちょっとクセのある依頼だし、ヴィルが同行してる部分も私がちゃんとフォローできるかどうかの枷になってるものね。


 ぐぬぬぬ。国王め……!


「とりあえず、こっちの報告もしておくけど、今やってることはスコップ渡されてグルーと一緒に穴掘り中」

「は?」

「魔法使わないで土壌調査しろって市長に言われてね。一応確かに呪いの類いは感知できるけど、まだ本体が見つからなくて」

「俺がいない間にそんなことになってたのか」

「そうなのよ。てか、信じられる!? 聖女にスコップ片手に穴掘りさせるって! ありえなくない!?」

「……あー、なんか、悪いな」

「もっと労ってよ! もうくったくたにくたびれたんだから! しかも誰かさんは連行されてっちゃうし。ねぇ、グルー!」

「グルーはとっくにそこで寝てるぞ」

「え、ウソ!?」


 ヴィルが指差した方向を見ると、ふかふかのベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに寝てるグルー。どうりで静かだと思った。


「はぁ、しょうがない。グルーにも手伝ってもらったから疲れているんでしょうね。いっそあの令嬢避け代わりにグルーをこのままここに置いていくわ」

「何から何まで悪いな」

「もう今更だし。そうそう今更といえば、ヴィルってヴィデルハルトって言う名だったのね」

「それは本当に今更だな」


 思い出したかのように言えば、ヴィルが笑う。どうやらちょっとは気が紛れたようだ。


「別にシオンは今まで通りヴィルでいいけどな」

「もちろん、変えるつもりはないわよ。言いにくいし」

「そうか。シオンらしいな」

「さて、私はそろそろ自分の部屋に戻るわ。あのご令嬢に私がここにいるのバレたら面倒だし。本当は連れ帰ってあげたいけど、そうしたら色々と面倒なことになりそうなのは目に見えてるから、ごめんね」

「いや、俺もそんな気がしているから気にするな。だが、無理を承知で言うが、できれば早くここの問題を解決してほしい」

「早急に片付けたいのはやまやまだけど、魔法使わずに土掘るのって思ってるよりも結構大変なんだからね?」

「それはわかっているんだが」


 ガチャガチャガチャガチャ!


 ドンドンドンドン!


「ヴィデルハルト様〜!? 開けてくださいませー!!」


 噂をすれば嵐のように舞い戻ってきた彼女。

 もう夜更けだというのにそんなことおかまいなしにドアの前で叫んでいる。


「本当にまた来るとは……」

「大丈夫。こちら側から開けなきゃ開かないよう魔法かけてるから安心して。ついでに防音魔法もかけておく。朝になったら自然に解除されるわ」


 パチンと指を鳴らすと一瞬で外からの音が一切聞こえなくなる。


「ありがとう。これでゆっくり寝れる」

「何かあったら防衛魔法が発動するし、いざとなったらグルーを使って追い払っちゃえばいいわよ」

「あぁ、そうする」

「それじゃ、私はもう帰るね。グルーをよろしく」

「あぁ。色々とありがとうシオン」

「いいえー。じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」


 ヴィルににっこりと微笑まれてちょっとだけキュンとする。

 そしてそんな自分に気づいて、顔が熱くなって慌ててヴィルの視線を避けるように彼から顔を逸らした。


 うん、相変わらずヴィルは顔がいい。

 イケメンに微笑まれたらキュンしちゃうのは仕様だ、仕方ない。それにやっぱり感謝されるのは気持ちがいいし。うん、だからこれは不可抗力だ。


 自分で自分にそう言い訳しつつ、ヴィルに背を向けて転移魔法で自分だけ元の部屋に戻る。

 なぜか未だに顔が熱かった。


「ヴィルにときめくだなんて、きっと疲労のせいね」


 部屋に戻ってくるなり、バタンとベッドに突っ伏す。回復魔法は使っているものの、疲労感は拭いきれなかった。


「早く寝よ」


 きっと疲れているせいで思考が正常に働いてないのだとそう自分に言い聞かせて、私は明日に備えて眠りについたのだった。

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