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ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました!〜  作者: 鳥柄ささみ


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第十一話 律儀な王子様

「ありえないだろ! 討伐なんか!」

「え? だって魔法壁作って怯えて暮らすより、元を絶ったほうがいいでしょ」

「それはそうかもしれないが! そうじゃないだろ!!」


 食事などを済ませたあと、とりあえず今日はここで泊まるようにと村長の家の与えられた一室でヴィルが声を張り上げる。相変わらずヴィルは煩いなと思いつつも、宥めるために「まぁまぁ、落ち着いて」と席に座るように促した。


「落ち着けるか! 凶悪な魔物なんだろ!? 危険じゃないか!」

「だからこそ、でしょう? 倒したら村は当分安泰だろうし、こまめに魔法壁張り替えるよりかはよっぽどいいわよ」

「それでも、人を喰う魔物なんてろくなもんじゃないだろ! いくらシオンが強いからって、無茶すぎる!!」

「そこは、ほら、ヴィルにも頑張ってもらって」

「勝手に戦力にされてもオレはまだ駆け出しなんだぞ!」

「それは自信満々に言うことなの……?」


 確かにヴィルが言っていることは最もなことだけど、そうは言っても戦えるメンバーは私とヴィルだけ。

 さすがに村人達を連れて行くわけにもいかないし、応援はないと見て間違いないだろう。

 というか、応援を呼ぶのさえここの村は一苦労だ。その労力を考えると私達でどうにかするのが最善である。


「大丈夫、大丈夫。ヴィルにはめちゃくちゃバフかけてあげるから。敵にはたっぷりデバフもかけるし。こういうのは場数踏んでなんぼだから頑張ろ!」

「聖女が言うセリフじゃないだろ、それ」


 実際、討伐するほうがいいと提案したら「え、聖女様が討伐されるのですか!?」「さすがにいくら聖女様と言えど、それは無茶です!」とジュンと村長に止められたが、「大丈夫です! 私、聖女ですから!」という謎の自信に満ちた答えで彼らを黙らせた。

 きっと彼らは魔物避けの魔法壁さえどうにかできればいいと考えていたのだろうが、やはり危機が迫っているというならその危機ごと取り除くのがベストだろう。


 本音は、ここに何度も来るのはめんどくさいから手っ取り早く問題解決したいだけだけだが。


「とにかく、死なせないように気をつけるから安心して。それとも、そんなに行きたくないならここで待ってる? 私一人でも多分どうにかなると思うし」

「何だよ、それ。……わかったよ、行くよ! 行けばいいんだろ」

「別に無理して来なくてもいいわよ。お留守番さえしっかりしてくれれば」

「いや、行く。ここまで来てシオンに何かあったら困るだろ。それに、一応今回の件は父さんが依頼して来てるわけだし」

「ヴィルって変なとこ律儀ね」


 最初こそ王子を気取っていたけれど、ヴィルは王子のわりにワガママも少ないし、物分かりがいい気がする。かなり私の偏見の入った意見だけど、ヴィルは王子の中でもいい王子だと思う。


「シオンも国民であることに間違いはないし、国民を守るのは次期王である俺の義務でもあるからな」

「わー、カッコいいー」

「バカにしてるだろ」

「してないしてない」


 むすっと膨れっ面になるヴィル。

 感情が顔に出やすいのは次期国王としてどうなのかと思いつつも、一緒に旅をする身としてはわかりやすくてありがたい。


「そういえば、何でヴィルは村長に自分は王子だってことアピールしなかったの? 言ったら扱い違っただろうに」


 田舎の村なせいか国王や王子の顔を村長達は知らないらしく、それに便乗してなぜかヴィルは自分が王子だということを隠し、私を守る護衛ということにしていた。


「無駄に仰々しいのも面倒だからな。あと、王子だからと余計な下心を出されても困る。縁談がどうとか、誰々を重用してくれだとか、キリがない」

「あぁ、なるほど。王子は王子で大変なのね」


 立場によって悩みはそれぞれ違うのだなと納得する。


 確かに身分を明かせばそれ相応の待遇はあれど、それに付随して面倒なこともあるだろう。

 実際、私も過去にどうかこのまま逗留してこの街の守護神として魔物の脅威から守ってくれと頼まれたことがあったことを思い出す。

 断っても断っても縋りつかれて、最終的には夜逃げのように白夜光のみんなで逃げたのは未だに苦い思い出だ。


「でも、そのわりには私には王子アピールするわよね」

「そ、れは……っ! ここまで王子という肩書きを無視する女は初めてだからな。文句も言いたくなる」

「いいじゃない。特別扱いしてほしくないんでしょ?」

「そうは言っても限度があるだろう!」

「えー、じゃあ王子王子ってかしずいたほうがいい?」


 もっと王子として扱えというけど短い付き合いとはいえ今更だし、接し方を変えるつもりはないが、どうしてもと言われるならやぶさかではないと提案する。

 そしてわざと上目遣いでヴィルの手をギュッと握りながら「ヴィル王子のために、私……頑張ります……っ」と言うと、ヴィルが急に黙り込む。

 その後、逡巡しているのかフリーズしたあと、突然カッと顔を赤らめて「やっぱりいい!」と断られてしまった。


 一体どんな想像をしたんだ。


「なんか、えっちなこと想像したんでしょ」

「違う! シオンに関係ないっ」

「でもいきなりその反応ってなんか怪しい」


 私が面白半分にヴィルに近づくと、たじろぎながら後退りされる。そんなに動揺するだなんて、そんなに言えないようなことを妄想していたのか? と興味をそそられて、ずずいと顔を近づけると、ヴィルは耳まで真っ赤に染めていた。


「く、来るな! もう寝る!!」

「王子、添い寝しましょうか? それとも膝枕でもしましょうか? 子守唄歌います? おやすみのキスは?」

「結構だ!」


 ふんっと鼻息荒く、がばりと勢いよく布団の中に潜りこんでしまうヴィル。


 やばい、またからかいすぎたかもしれない。

 ヴィルの反応面白いからついからかっちゃうんだよなぁ。


 先日自重しようと思ったばかりなのに、ついヴィルの反応が可愛くてからかってしまう。なんていうか、母性本能がくすぐられるのだ。


「私ももう寝よ。明日は早起きして行くからね。おやすみ、ヴィル」

「……おやすみ」


 不機嫌さは隠しきれていないが、それでも返事をしてくれるヴィル。相変わらず律儀だ。こういうタイプの男性と接する機会があまりなかったからか、元カレ達がいかに自分本位な人達だったかと思い知らされる。


 男を見る目を養わなきゃなぁ。


 そんなことを漠然と思いながら目を閉じる。

 明日はいよいよ魔物の討伐だ。あまり夜更かししては体力だけでなく美容の上でもよろしくないと、自らに回復量アップの加護のバフをかける。ついでにヴィルにも。


 凶悪な魔物、一体どんな魔物だろうか。


 人間を食べるくらいだからまぁまぁの大きさあるだろうし、さすがに父さんを食べた邪竜ってことはないだろうけど、もしそうだったら私が仇を討たないとな。


 もしも父の仇の邪竜なら、その魔物を完膚なきまでに打ちのめしてやることを心の中で誓う。

 そして、疲労した心身はあっという間に睡魔によって覆い尽くされ、私はそのまま夢の世界へと旅立っていった。

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