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最強の魔女は大好きな彼を諦められない

作者: 同時斬

試し投稿。


私の名前はイライザ、この世界で最強の天才魔術師だった。


だった……と言う過去形を使うのは、もう自信が無くなったからだ。


何が最強だ、何が天才だ、何が魔女だ。


好きな男の子一人守れない最低の魔術師だ。


彼との出会いは最低だった。


魔術学校で主席だった私は長期休暇を利用して見聞を広める為に一人で旅をしていた。


そんな、ある日。


旅の途中で泊まった宿屋での出来事。


朝、部屋で目が覚めると私はベットで裸で寝ていて、横に彼が寝ていた。


私は彼を思いっ切り殴った。


これについては、私が夜に酒場で夕食を食べた時に、ジュースと間違えてワインを飲み、酔っぱらって間違えて彼の部屋に入ったので、100%私が悪いのだけれど……


その頃の私は彼に責任を押し付けようとし、さらに裸の姿を忘れさせるために魔術で記憶を操作しようとした。


だが、彼には魔法が効かなかった。


彼に話を聞くと、彼はこの世界人間ではない。


異世界転移者というやつだ。


神と名乗る存在に面白半分で呪いのようなものを付けられた。


それは1つの世界に1ヶ月しか居られない呪い。


その影響で彼には他の魔術や、それに似た能力は効果が無いそうだ。


飢饉ききんに見舞われた村に住んでいた彼は、襲ってきた野盗から山へ逃げ、空腹で崖から堕ちたところを神に助けられたのだが、神は退屈しのぎに彼に呪いをかけて異世界に放り出した。


彼が7歳くらいの事だった。


聞いた時もムカついたが、今思い出しても反吐が出る。


それからの想像を絶する地獄のような旅。


言葉も解らず、文化も違う、頼る人も居ない……


吹雪、豪雨、砂漠、宇宙、未来、過去、あらゆる時代の様々な世界を旅してきた彼。


さらに馴染んでも、友が出来ても、好きな人が出来ても必ず訪れる別れの時。


それをバラエティーを観るように、神と名乗る者は楽しんでいる。


この神は、元は別の世界を救った異世界転生者で報酬で神になったらしいが……


こんな奴に負けたくないし、彼を助けたいと思った私は、この呪いを解除してあげると安請け合いした。


自信もあったしね。


それからは呪いを解くため一緒に行動するようになった。


彼は冒険者ギルドに所属していたが短い期間しか居れないため実力はあるのに低いランクの冒険者だった。


でも、今思えば低ランクのクエストだったけれど、彼と一緒だったから楽しくて充実していた。


伝説のドラゴンを倒すより、彼と一緒に倒したゴブリンの方が嬉しかった。


高価な宝石を手に入れるより、彼と一緒に取った薬草の方が印象に残った。


彼と一緒に行動して彼のことを沢山知るたびに彼の事が、どんどん好きになっていった。


彼は私より1歳年下だったので、私は年上の姉のように振舞った。


今にして思えば無理に背伸びせず、もっと彼に甘えてもよかったな……


私は彼に色んな知識を教えてあげた。


彼の驚く顔や目を輝かせて羨望せんぼうする眼差しが好きだったから。


そして出会ってから1週間ほどして、私は彼に好きだと告白した。


彼は少し困った顔をした。


わかっている彼は、この世界に1ヶ月しか居られない。


わかっていても私は、この気持ちを止められなかった。


彼は悩んだ末、私の告白を受け入れてくれた。


私たちは恋人同士になった。


それからは色んな場所で、彼とデートした。


私にとっては夢のような輝いた日々だった。


だが、残酷にも期限は迫ってくる。


私は焦った。


呪いが全く解けない。


呪いを解こうとすればするほど、この呪いの強さと自分との力の差を実感する。


この呪いを付けた奴の実力と性格の悪さに、虫唾むしずがはしる。


残り5日くらいになると私は、ほとんど諦めていた。


私は彼とキスをした。


初キスだったが、特に良いとも思わなかった。


だって、その日に彼に全てを与えたから。


自分の体に、心に、彼を忘れないように、強く強く……


そして別れの日。


次元の裂け目に吸い込まれる彼。


私は赤ん坊のように泣き叫ぶことしか出来なかった。


彼は消える前に……


「辛かったら拙者……僕の事は忘れて……嫌いになってもいいから……」


「イヤ……絶対にイヤーーーーーー!!」


彼なりの優しさなのだろうが……


彼を忘れるなんて……嫌いになるなんて死んでも嫌だ。


理解してくれたのか、覚悟を決めたような顔つきに彼はなる。


「……決めた、いつになるか何十年かかるか、わからないけれど……必ず戻る‼」


そう言い残して彼は、この世界から完全に消えてしまった。


涙と声が枯れるまで私は永遠に泣き続けた。


2年後……


魔術学校を卒業した私は、強くなりたくて力を求めた。


自分の出身地の国の王宮魔術師になり、あらゆる特権を得た。


それから各地の様々な魔術や伝承を勉強した。


古代の遺跡の調査なども積極的に参加した。


貪欲に力を求める私。


いつの間にか人々は私を魔女と呼び、褒め称え尊敬された。


でも、そんなことは気にならなかった。


挫折と後悔。


私に今あるのは、これだけ。


彼は必ず約束を守ってくれる。


だから今度は離れないように、後悔しないように力をつける。


彼の側に居られるように。


でも、ふと彼の事を思い出すと……


「ふえええっ……リュウノスケ君、会いたいよう……ううぅ……」


と疲れて眠るまで私は泣き続けるのだった。






















今の連載している作品が終わったので気分転換に書きました。

アレ計算して酷いキャラ書いてますが、精神的にキツイ。

以前、書いたやつを少しアレンジしました。

連載中のやつは、今月中には全話投稿します。


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