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#3 望郷

 #3 望郷


 亜耶Side


「昶、魔力センサーポッドの様子はどうです?」

「今の所は動作に異常なし……当該海域までこの速度だと後一時間ってとこかな」


 私と昶は件の魔力センサーポッドを愛機である魔導機兵ミスティックシャドウⅡに搭載して哨戒飛行に出撃していた。


 魔導機兵というのは超有名機動戦士的な所謂リアルロボットである。

 機体の身長は18mありその武装は近接戦闘用の剣、固定武装は頭部機関砲と腕部に格納されたグレネードランチャー、オプション武装には76mmオートカノン、90mmマシンガン、105mmアサルトライフル、120mm対艦ライフルに各種航空爆弾や航空魚雷等多岐にわたる。


 そして魔導機兵は大きく分けて2種類に分類される。

 陸軍のアレスのような陸戦専用機と飛行可能な汎用機。

 そしてその汎用機にも海軍の正式採用機であるフェンリルのような人型の機体と今私達が搭乗しているこのミスティックシャドウⅡのような航空機と人型に自在に変形できる可変機がある。


 ちなみに私と昶が駆るミスティックシャドウは航空機としての性能に優れた戦闘機形態のエアロギアと陸上戦闘や近距離での戦闘に向いた人型形態のアサルトギアの二形態に変形するのだがⅡ型に進化して人型形態と戦闘機形態の中間であるマニューバギアという機動性能に特化した形態にも変形出来るようになった。

 もっともまだ可変機はその機数は少なく試作機のミスティックシャドウⅡとその姉妹機のヴァイスカノーネの二機があり、そのヴァイスカノーネも以前の戦闘で大破し修理中、その量産機であるストラトシャドウもやっと先行量産一号機と二号機が完成してようやく各種試験飛行が終了して帝国正規軍とあたし達が所属する傭兵部隊「アトロポス」へと引き渡されたばかりという状況である。


「ところでさ、亜耶」

「なんです?」

「またこの前みたいな厄介なのが出てくると思う?」

「ラーシャ博士の話だとアスコモイドグレル程じゃなくても揺り戻しの規模次第で大型の魔導種が出てくる可能性は高い、という話でしたが」

「そうなんだよねえ…………でもさあ亜耶」

「はい?」

「魔導種ってさ、この世界とはまた別の異なる世界から来ている可能性が

高いってラーシャ博士が言ってたじゃない?」

「そうですね」

「それってもしかしたら「魔導種以外の何か」が出てくるとか、逆にあたし達が突入すればここからまた他の世界、たとえば地球世界へ行ったりとか出来るのかな?」

「ラーシャ博士の説明だとあり得そうな話ですが……ただ私達が行く場合はこちらで行き先を選べなければあまり意味が無いと思いますが」

「もしもさ……SFやアニメに出てくるようなワープゲートとか位相差空間ゲート的な制御が出来れば日本に帰れるのかなってさ……」

「…………」

「…………」

「…………昶?泣いているんですか?」

「……泣いてなんかないわよ」

「……そうですか」


 私はちらりとミラーで昶を見た。

 少し俯いていた昶の表情はよくわからなかったがその頬に一瞬陽光が反射して光ったような気がした。


 基本的に昶は気が強いタイプだしあまり物怖じしない。

 そのせいかこれまで昶は日本への郷愁を感じさせる物言いはした事が無かった。この前のラーシャ博士の発言の後、しばらく黙って考え込んでいたのはこれだったのか。 

 気が強く普段はそれを全く感じさせない昶でもやはり自分が生まれ育ち、家族や友人のいる日本が恋しくなるのは当然だろう。

 とはいえ沈んだ表情の昶を見て少しいたたまれなく感じたのも確かである。


 暫くお互い無言で当該海域の上空を一定の速度で、渦巻き状の進路をとって隈無く周回するように飛行を続けその魔力量の数値を後席の昶が格子状に細かく分けられたエリア毎に書き込んでいく。


「……あれ?」

「どうしましたか?」

「魔力量の分布に偏りがあるのよ……最初は中心部へ近ければ近いほど魔力が濃くなるかと思ってたんだけど……そっちのモニターにまわすからちょっと見て」


 昶が操作パネルに指を走らせると私の目の前の情報モニターにエリア毎に格子状に分けた空域図が映し出された。


「確かに偏ってますね」

「でも偏り方がおかしいのよね……?」


 見ている間にも魔力センサーポッドが捉えた魔力量の数値が変化していく。

 その魔力量の濃い場所がだんだんと一定の場所に移動し、ある所には集まり、またある所には線状に分布するように移動していく。

 モニターで魔力量の分布状況を注視していた昶の表情が驚きに変わっていった。


「この形、いや模様は……!!」

「…………魔法陣……!!」

「中心部の数値と座標は何処です?」

「あたし達の真下……キャンドルタウンマナヴォルカン群のほぼ中心!直径はほぼ500m!」

「昶、あれを!!魔法陣が視認できます!」


 私が正面の大型モニターを指すとちょうど魔法陣の中心部のあたりの海面が輝き始めた。


「中心部で魔力量急速上昇!!まずいわよ亜耶、離れて!!」

「オーバーブーストで離脱します!」

「トパーズ1よりブラッククラウン!!応答を!」


 昶が今回の哨戒任務の司令部である傭兵組織アトロポス所属の傭兵艦隊臨時旗艦であるブラッククラウンのコールサインを持つ空中重巡洋艦「黒姫」へと通信を繋ぐ。


『ブラッククラウンよりトパーズ1、どうした』

「当該海域中心部で急速な魔力の上昇を確認、その魔力は魔法陣を形成しています」

『了解したトパーズ1、離脱しつつ安全な距離を確保、引き続き魔導種出現の監視をされたし、なお魔導種出現時は交戦規定にもとづき対応せよ』

「トパーズ1了解……聞いての通りよ亜耶、魔導術式管制及び火器管制ロック解除」

「了解しました、射撃は任せます昶」

「今持ってる射撃装備が76mmオートカノンと90mmマシンガンだけってのはちょっと心もと無いから火力不足の時はお願いね亜耶」

「はい、念のためスラッシュビットの術式をいつでも起動できるようにしておきます」

「うん……更に魔力量増大!……これは!」

「どうしました昶!?」

「質量反応複数を計測!「何か」が魔法陣から出てくるわよ亜耶!」

「!!」


 私は不測の事態が起こってもすぐに回避運動に入れるように最も運動性能の高い戦闘機と人型の中間形態であるマニューバギアに機体を変形させた。

 戦闘機形態である機体の後ろ半分のエンジンポッド全体が推力変更ノズルを兼ねて二本の脚として下向きに、そしてノズルの先端が開いてつま先と踵となり、更に両手が胴体から突き出て変形を完了した。


「亜耶!!あれ!!」


 昶が指さす方向を見ると大きな魔法陣の中から出てくる何かの影が見え始めた。


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