ホッドに連れられ
自分の足で歩いていた時より遥かに速い速度で道を進んだ。
小屋までの道と違ってある程度均された未舗装路が森の中を続いている。
「乗り心地が悪いからな、ちょっと進んだ先の開けた所で休憩だ」
ホッドが運転席から声を掛けてくれた。
確かに後席は乗り心地が悪い。だが、エンジン音が甲高いもののほとんどせず、振動も思っていたより遥かに小さい。
10分程度経ったところで開けた場所に出た。
鬱蒼とした森だが道と同じくこの広場も整備されているように見える。
「これで行程の1/3位だ、体は大丈夫か?」
「はい、お尻が少し痛いですが大丈夫です。」
「そうか、ならいいな。
そういえば飯はどうしてたんだ?腹は空いてないか?
オラは昼飯食ったがお前さん歩いてきただけなら何も食ってないだろう?」
「えぇ、気が付いてから食べてないのですが今のところは大丈夫です。」
「無理しなくていいぞ。役場から連れてったら手当を貰えるって話だからな。
小屋から弁当を一つ持ってきてあっから次の休憩の時にでも食え。」
「何から何までありがとうございます・・・。」
最初は怖かったが、ぶっきらぼうながらも気配りしてくる優しい人だった。
小休憩を済ませてまた先を進み始めた。
走っている最中にホッドさんと会話をした。
「ホッドさんはどうしてあの小屋で木こりを?」
失礼な内容だが気になっていたことを聞いた。
「役場からの依頼でな、定期的に道の点検をしてるんだ。
誰も触らなくなるとすぐに荒れるからな。」
「使う予定があるんですか?走っている時周りを見てましたけど人が住んでいるようには見えなかったのですが・・・」
「まぁな。オラには良くわからんが先の荒野までの道がこの道しか無いから維持管理をしないといけないそうだ。
この森は深いから一旦廃道にしたら作り直すのは難しいだろう。そうなったら困るから金は掛かるが維持するんだと。
何故こんなところに道を通したのかはよく分からん。かなり昔からあるらしいがな。」
役場と聞いていたがしっかりとした統治機構が存在しているようだ。
「村はどのような所なんですか?」
「村って言っても立派なもんでもない。200人程度が集まって暮らしてる小さな集落さ。
開拓村だからな、まだまだ頑張らな住むには大変なとこだ。」
「開拓村?」
「記憶が戻れば分かると思うがここだ一帯はまだ未開の地だ。これから開発して産業を立ち上げてるんだ。」
「森を切り開いてるんですか?」
「行けば分かるが、こんな感じの濃密な森はもうじき終わる。木が疎らに生えてる程度の林がこの先広がってるんだ。
そこを開拓してるんだ。この道沿いにな。
さっきの話にも繋がるが、先に道があってそこを起点に作ってるもんだから、村の先の道も維持してるんだ。」
話していると道に変化があった。
道の周りの森が言っていた通りに木々が疎らになってきた。
「そろそろ休憩するぞ。大分走ったから、こっからあと1時間位で着くが一応休憩だ。」
そう言って道の端にバイクを停めた。
バイクを降りたところでホッドから箱と丸い筒を渡された。
「ほれ、さっきの休憩の時に言ってた弁当だ。食っとけ。」
受け取った箱は弁当箱だったようだ。
蓋を開けてみたら緑色の米のようなものと鶏肉の照り焼きのようなものが入っていた。
「ああ、すまん。フォークを渡し忘れたな。」
そう言って木製のフォークを渡された。
「ありがとうございます。頂きます。」
気づいて以来何も食べ飲みして来ていなかったが、空腹感は無かった。
しかし、頂いておいて手を付けない訳にもいかないので食べてみることにした。
米のようなものを少しフォークで口に運んだ。
味は特にしなかった。緑色は着色ではなくそういう色の穀物なのだろう。
鳥の照り焼き?も食べたが、見た目は鶏むね肉だったが脂がかなりのっていて味付けも濃い味だった。
おかずには向いている味付けだった。
筒の蓋を開けると水が入っていた。
照り焼きの味が濃いので水はありがたかった。
ざっくりとしたお弁当だったが、有難く平らげた。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
ホッドに礼を言う。
「俺の手作りだから微妙だったろう。腹に入ったことだし残りを進むぞ。」
飯の為だけの休憩のようになってしまった。
申し訳なさを感じつつ、バイク後部に乗った。