表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

さんっ

やべぇ。ドキドキがとまらねぇ。

鯉川の腕をやさしくほどいて、適当に別れを告げて家に帰る。

家に帰る途中にある令の家。

普段は気にならないのに、足を止めてしまった。

まだ帰ってはいないみたいだな。そりゃそうだ。さっき走ってたんだから。


でも令だろ?

あの真っ黒で男みたいで。走るのは誰よりも早くて。

それが高校でも続けてたってことだよな。


そんなことを思いながら家に帰りベッドに倒れ込んだ。

鯉川からラインが来てたから適当に社交辞令を送る。

なにをするでもなく一時間ほどベッドで考え事。


令のこと──。

全然知らねぇ。小学校の思い出しかねぇ。

興味も無かったもんな。仲いい男友達だと思ってたら女で、グループも別になったから話もしなくなっちまったし。


ベッドから起きて、昔のアルバムを引っ張りだして令を探す。

アスレチックで家族で出かけた写真。

棒渡りをしているオレたち。ターザンのように縄にぶらさがってるオレたち。どれも令が先頭だ。

そう。昔は家族ぐるみの付き合いだった。

この後にキャンプ場で焼き肉やったけ。

超仲良かったよな。かくれんぼでも同じ場所に息を潜めて隠れたりもしてたし。

中学の卒業アルバムの令の顔は先ほどよりも幼い。そして田舎臭い。思わず笑ってしまう。


そんなこんなで二時間。

正直あっという間だった。

最近、時間をつぶすのが大変だったのに、二時間があっという間。

そして落ち着かない。胸が締め付けられる。


その時、スマホが着信を知らせる。

それは美容師のお姉さんからだった。


近くまで来ている。

忘れてた。とりあえずスマホと財布を持って駆け出し、お姉さんの車に乗り込んだ。


どこをどう走ったのなんか覚えていない。

終始上の空。でも心地よい気持ち。

食事もおごってもらったけど、味も分からなかった。



令の後ろ姿が目に焼き付いている。令の後ろ姿。

ホテルの部屋に入った時、お姉さんの後ろ姿。

それに令の後ろ姿が重なる。

なぜだろう。それはお姉さんなのに抱きついていた──。


「ちょ。もうなの?」


言葉がうざい。かきけしたい。

無言で身を重ねて一戦二戦。

脳内麻薬(エンドルフィン)が溢れ出す。お姉さんのことをぼかせる。令への思いと混ぜ合わせて。この熱い思いを薄められる。

そのまま今日は眠ってしまえばいい。

しかし、この高鳴る思いは心地よい。



次の日目を覚ますと、美容師のお姉さんはオレの髪をいじりながら顔を覗き込んでいた。

それと目が合う。お姉さんは優しく微笑んだ。


「スゴく求めてたね。そんなに私のこと好きなの──?」


好きなの?

好きなの?


それはお姉さんのことじゃない。

重ね合わせた令のこと。


オレが? このオレが?

今まで惚れるなんてことなかった。

向こうが勝手に惚れてくれるもんだと思ってた。


でも惚れるってこういうことか。

このお姉さんも鯉川も、こういう思いをしてたってことか。

それを無碍にしちまったんだな。


令。昨日久々にあったのに。

一目惚れ?

それとは違う。

でもこういうことってあるんだな。

会いたい。令に会いたい。


胸が高鳴る。すげえ。これが人を好きになるってことか。

恋するってことなのか──!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  女抱きながら別の女の子と考えてるとか、ゲスい(^^;)
[一言] 昭和30年代の歌舞伎役者の人で精通が来たと思ったら、周囲の女の人に童貞取られたって人がいて、美少年で恋愛より先に性交が来て、だいぶ苦悩されたようです。 威-っ、がんばれー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ