じゅうろくっ
病室を出て扉を閉める。
そこへ令の母親が駆け寄って来た。
「すごい。すごい。タケルくん」
「いえ。でもレイのこと心配です。明日も来ていいですか?」
「ええ、それはもう。ねぇ。あっちの談話室で話さない?」
「あ、はい」
なんだろう。おばさん告白とかしないだろうな〜。
そういう気まずいのやめてくれよ〜?
談話室はオープンなスペースで扉は無い。奥まった場所に行って告白されても嫌なので、廊下に一番近い座席へと座る。おばさんはその向かい側に座った。
今までは電気が消えていたが、看護士が数人来て電気を点けてくれた。
ありがたい。ありがたいけど……そんなにオレ珍しいですか? 超見られてるんですけど……。
「タケルくんって、レイとどういう関係?」
「え? 友達っすよ……。昔からの幼なじみっす」
「なるほど〜。レイから告白受けたの? それで振っちゃった?」
「いや……。そんなまさか。振られたのはオレの方で……」
「え!? そうなの?」
おばさんの目がまん丸い。驚いているんだな。一体なんなんだよ。
「実はね。レイの部屋に遺書があったのよ。大好きな人がいたけど遊ばれてしまって、もう許せないって書いてあったのね。そしたらタケルくんが来たからてっきり……」
「そうだったんですね。レイはアイツを許せないんだと──」
「タケルくんも知ってる人?」
「いえまさか」
「でも全然、私にも話さなかったレイがタケルくん来た途端話すんだもの。きっとあなたに甘えてるのね。優しいあなたに甘えているのよ。さっきの話聞いていてもタケルくんが一歩も二歩も引いているもんね。憎らしい子よ。でも嫌いにならないでやって欲しいの。本当はそばにいて欲しいんだと思うわ。ああやって毒づかれるのは嫌かもしれないけど、また来てね」
「ええ。それはもちろんです」
そうだった。家族とも話をしなかったのにオレだけ──。
令がもしもオレを見てムカつくならそれでもいい。怒りという感情が令に生きる活力を与えてくれるかもしれない。
そう簡単に死なせない。
オレはお前を生かしてみせる。
元に戻してみせるよ。令──。