じゅうさんっ
令は深く傷付いた。
だがそれはさっきまでだ。
今は二人して並んで歩いている。
楽しく笑い合っている。
この道は昔通った道。小学校に通うための。
それを今一緒に歩いているなんて思い出深い。
そんなどうでもいいことばかり話した。
令の家の前でもう一度あの言葉を。
「レイ。ずっとそばにいるよ」
「ふふ。分かった、分かった」
令はそれをどう受け取ったのだろう。
半分冗談としてとったのかもしれない。
慰めだととったのかもしれない。
どの女にも同じことを言うと受け取ったのかも。
でもちゃんと話した。
笑って分かりあったんだ。
クソ教師と決別した令。つらいだろうな。
でもオレは無意識に飛び上がった。
令とまた一緒の時間が増えるかも知れない。
令を送って家に帰ると、妙に熱っぽい。
令への思い? なんて思ったけど、体温を測ると38度4分。
やばい。寒い中、令にアウターを貸したままでずっといたせいかもしれない。
それとも精神的疲労だろうか。
母親に心配されながらベッドに倒れ込んで就寝。
次の日も熱が下がらずに学校を休んだ。
令には心配をかけないようにラインも送らずとにかく静養した。
二日後には平熱に戻った。
母親の作った飯にむさぼりついていると、母親が小さい声で話しだす。
「タケル。細井さんとこのレイちゃんと仲良かったよね」
「今でも仲いいけど?」
「え? そうだったの?」
「ああ。この前も遊びに行ったし」
「ひょっとして付き合ってるとか?」
「いや、付き合ってはいない」
「あ、そう」
母親は少しばかりホッとしたような声を出した。
「なんでそんなこと聞くの?」
「実はあんたが熱出してうなってるときに細井さんのところに救急車が来たのよ。なんでも令ちゃん自殺したんだって──」
は……?
「付き合ってる人とダメになっちゃったみたいで。手首切っちゃったんだってよ」
全てがスローモーション。
思考が止まった。
完全に固まっていた。
掴んでいた箸が床に落ちても気付かなかった。
令が。令が──。
令──。
ずっとそばにいたいって、冗談なんかじゃなかったんだよ。
本気だったんだ。
令が好きで。大好きで。
どうしようもないくらい好きで。
ずっとずっとお前を支えられたらって思ったんだ。
でも令にはオレじゃなかった。
オレじゃなかったんだな。
なんか。
ひどく。
疲れた。
ひどく。
疲れた──。
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是非とも結末まで読んで下さいね!