意外な? 生産職
生産職で人気なのは鍛冶師、服装店、採掘師、錬金術師とかかな。
でも、私はこれを選んだ。
「回して」
「はい」
円形の台でよくこねた粘土を置いて、助手に台を回させる。
手に水を取り粘土を手で包むようにしてゆっくりと真ん中に親指を入れてカップの形を作り上げていく。
慎重にふちの部分を薄く縦長に形成していく。
最終的にふちの厚さは二ミリに揃える。
達人ならもっと薄いのが作れるのだが、この陶芸家というのは極めている人がいない。
私が唯一といってもいいんじゃないかな。
まぁ、材料も粘土だけで一般食器程度は作ることができる。
地味とも思われるかもしれないけど私にも譲れないものがあったのだ。
あれは、まだ私が前衛職についていた頃だ。
「敵はどこ!?」
「いた! 前だ!」
オオカミ型のモンスターに囲まれ戦闘中。
私は盾剣士として中核戦力だった。
方陣を取ることで仲間と協力して数匹ずつ確実に倒して、最後の一匹が正面から最後の攻撃を仕掛けてくる。
「ここは私が逸らすからその一瞬で攻撃に!」
モンスターが突撃してくる。閃光の様に一直線にしか見えない攻撃を私は盾を使って右の足元に攻撃を逸らす。
成功してモンスターは地面に転がった。
そこをすかさず仲間が攻撃をかけて倒す。
「ふぅ、こいつで最後か。みんなご苦労」
「さぁ、先に進もうか」
私が所属していたパーティーは名の知れた腕利きたちが集っていたため結構有名だった。
今回もあるアイテムを求めて探索中だった。
「今さらなんですが、求めてるアイテムってなんですか?」
「ああ、なんかの塊らしい。名前を聞いてもピンとは来なかったな」
「へー」
未だ見ない知らないアイテムということだけでもワクワクしてしまう。
冒険をまだ楽しんでいた。
ここのボスに会うまでは。
「くっ、とんでもない強さだ! 油断するなよ!」
ここのボスは土属性の土龍。土のドラゴンだ。
削っても削っても再生してしまう厄介なボスだった。
火の代わりに岩石が飛んでくる。
スキルまで使って岩石は逸らすことができるのだが、やはり質量は段違いでパーティーメンバーでも満身創痍になっていた。
最後の一撃として温存していた魔術師の火砕流を足元に出す魔術と強力な落雷を二つ使用した双雷撃を用いてようやく倒した。
そして、目的のアイテムを手に入れたのだが。
「湧きでる粘土の竹筒?」
「粘土だって!? こんなものがレアドロップだって!?」
「アイテム無駄にしたわ~」
「ボクは魔力切れ……」
そりゃそうだ。
ただの粘土が永遠と出てくるだけのアイテムなんて誰が欲しいものか。
そう思っていた。
「これはアンタにやるわ。持っていてもしょうがないし、それにレア物はもっていないでしょ」
「え、あ、はい」
私も実際は欲しいわけじゃなかった。
というか、実際にいらないと思っていたのだが。
強制的に私のものになった。
その後、焼き物の師匠に出会い焼き物の生産職に転向したのはしばらくしてからだった。
これが、私が陶芸家になった経緯だ。




