私のご先祖さま①
「邪竜が復活したというのは、この洞窟で間違いないようですね。」
彼女の名は《アリア・エルティナ》。かつて邪竜を封印したエルティナ一族の末裔で、たった一人で王国を滅ぼすことが出来るほどの魔力を持つ。
前回邪竜が出現した時は為す術もなく、王都3カ国が滅ぼされた。その圧倒的な力を前に対等に渡り合えるのは、エルティナ家の血を継ぐものだけと言われている。
「魔力探知!」
洞窟内から発せられる魔力の中から、邪竜のものと思われる反応の方へ進む。
因みに、彼女の身につけている魔道具の一つには暗視効果が付いている為、暗視魔法を使わずに済む。
「それにしても入り組んだ洞窟ですね。まるで立ち入るなと言っているかのよう......。」
彼女のスキルには超記憶というものがある為、迷う心配はないだろう。
超記憶とは、これ迄に見て来たもの感じたものを全て脳内に完全記憶できるスキル。ただ、忘れたい事があっても脳内に残り続ける為、相当なメンタルが無いと管理できないスキルだ。
「それにしても何故、邪竜が復活してしまったのでしょうか。何者かが意図的に目覚めさせたとなると、面倒なのですが……。」
封印の力が弱まり復活しただけなら面倒な事にはならないはず……。しかし、外部から刺激を加え目覚めさせてしまったとなると、邪竜の怒りを買うため厄災を招きかねないのだ。
邪龍と言われているが元は普通の竜―と言っても、世界最強と言われる紅魔龍―なので、特別危害を加えなければ当然何もしてこない。
戦争で大陸を荒らしていた王国にキレた竜が、王都3カ国を滅ぼしたことより、人々に恐れられ邪竜と呼ばれるようになった。元はと言えば王国側に問題がある。
そんなことを考えながら歩いているうちに、洞窟最深部までやって来ていた。
幸い邪竜はまだ復活しただけで、暴走はしていない。いつ暴れ出すか分からない、と邪竜を恐れる国王に指示され再封印に訪れているのだが、正直何もしなければ邪竜だって何もしてこないということを理解して欲しい。
「邪竜がいるのはこの扉の向こうですね。」
扉の向こうには邪竜が封印されていた祭壇がある。まぁ復活しているので壊れているだろうが……。
アリアは念の為にと強化魔法を使う。
「まずは基本の身体強化!次に詠唱短縮と高速詠唱!それと、物理耐性、魔法耐性!紅魔龍は炎系だから火炎耐性も!そして最後に言語解析!」
次々とバフを掛けていく。テンションが高く感じるのは気の所為だろうか……?
深呼吸をし心を落ち着かせると、扉に手を掛けゆっくりと開けた。
その先の光景にアリアは衝撃を受けると共に微笑んだ。