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茶吉の日常

セイレーン

作者: 茶吉

水道局から電話が来た。ササ美さんが検針中に行方不明になったという。最近、検針員が姿を消す事件が多発していて、今年に入っていなくったのは10人目だそう検針に使うため持たされているタブレットにはGPS機能がついているため、その地点に水道局職員が駆けつけたものの、争った形跡もなくただ忽然と消えているのだという。GPSといえば、今朝出かける時にササ美が持って行ったガラケーにもついていたはず。パソコンで居場所を調べてみると、あったあった。伊豆高原の別荘地の、その中のでっかい一軒で点滅している。覆面パトカーでやって来た刑事にその地図の画面を見せると、にわかに色めき立ち、何本か電話をかけたあと、本官は現場へ急行いたしますが是非ご主人もご同行ねがえますか。というので同乗して行くことになった。現場に到着するとすでに機動隊員たちが問題の別荘を取り囲んでいて、スグにでも突入の準備が整っていますという。だがそこはちょっと待って欲しいもの。「踏むべき手順があるでしょう、ほらあのお約束の」と茶吉がほのめかすと、ああそうでしたとメガフォンを取り出し、「君たちは包囲されている。ただちに人質を解放しなさい。」と警部。すると、ガラガラーっと玄関とすべての窓もシャッターがおろされ、抗戦の構えと見える。どう見ても相手はプロだ。慣れている。「これは突入しかないな」と言う警部だが、「いやいや人命優先で行きましょうよ。ちょっと要求を聞いてみてくださいよ。」と茶吉がなだめて、警部が「なにか要求があれば聞こう」とメガフォンで言うと、ひとつの窓が開いて、「我らは水の精霊を崇めるもの。」と返ってきた。警部が「なんでもいいが拉致監禁は重い罪だぞ」と言うと、「「いえいえあたしたち拉致されてないわ」というササ美の声が聞こえてきた。奥さんの声でしょうか?と警部が聞くので、茶吉はメガフォンを受け取り、「ササ美!無事か?他の検針員さんたちもいるのか?」と声をかけると、ササ美が、「ええ無事よ。あたしたちみんな、検針していたらね、声をかけられたの。水道ばかり見ていると、水の精霊の声が聞こえてくるそうなのよ。それでね、ちょっと練習すれば水魔法が使えるようになりますよって言うじゃない。でね、この道場に教えてもらいにちょっと来たのよ。ええ、もう10人検診員がいるわ。先輩の早川さんは旦那さんが病気で、だから水魔法で治癒しなければならないのよ」と言う。

パトカーの無線が鳴り、この教団はテロ認定されていて幹部構成員たちは国際指名手配をされているそうで直ちに踏み込めと本部からゴーサインが出た。機動捜査隊の増員が続々とバスで到着し、強行突入となった。手錠を掛けられ次々と連行されていく信者たちは「ここには水の精霊がいるんだぞ」と息巻いている。「これがセイレーン様だ!」と振りかざしているのはただのペットボトル。引きずられて車に乗せられていく。今日は拘置所で寝かされるんだろうなぁと不憫に思えてきた。ササ美たちも話をきかれるため警察署へ行ってしまった。

誰もいなくなり、はぁ〜疲れちゃったなぁ〜と周囲を見回すと、この施設、仏教神道キリスト教すべての宗教色がごっちゃ混ぜでいかにも厨二病らしい祭壇やら魔法陣やらがそこらじゅうにあって不気味ながらも興味をそそられる。暗さに目が慣れてくると、部屋の隅に何か動くものが。さてはさっきの強制連行を逃れた信者なのか?と身構えると、振り返ったのはサングラスの司会者モリタさんだった。「富戸で釣りをしてたらテレポートされてきちゃったみたい」などと言っている。「富戸でしたら電車で帰ればいいですよ一緒に駅までいきましょう。とサングラスのモリタさんといっしょに駅まで歩いてモリタさんを電車にのせ、家に帰ってきた。警察からササ美も帰ってきてさっきまで一緒だったモリタさんの話をすると、

「施設ではここからどこかへテレポートする魔法は唱えていたけど、こちらへテレポートさせる魔法なんてだれも唱えてなかったはずよ。その人、ホンモノのモリタさん?幹部は何人も逮捕されたけど、結局、教祖はどうやったのか分かんないけど包囲網をくぐり抜けたようで、つかまらなかったのよ」という。

あれはホントに本物のモリタさんだったのだろうか?

自信は無い。


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