『状況把握』
「……」
霧華とマリアがゴーストと対峙し、一時的に空き部屋に身を潜めている頃。
その数多の部屋の一番奥の部屋で、ジェシカはモニターに囲まれた部屋の中で息を吐く。
部屋の中に漂う煙の匂いは充満して、ジェシカは小さく笑みを浮かべながら呟いた。
「……どうやら、彼も限界のようですわね。致命傷では無いにしろ、あそこまで衰弱してしまったら元も子も無いわね」
監視カメラから見える映像の中で、壁伝いで彼が半身を引き摺っている。
そんな彼の様子を眺めながら、ジェシカは再び天井へと息を吐いた。
「(キリカとマリアは共に行動しているわね。彼は彼女たちが居る部屋を素通りしてしまったようだけど、先回りするつもりかしら?それにしてはこの道は確か……)」
ジェシカは部屋の間取りや内部構造を思い出し、そんな事を考える。
そんな事を考えている間で、霧華たちに新たな動きがあるのを確認したのであった。
――霧華とマリアは休息として部屋の中で居たが、これ以上は無意味だと悟ったのだろう。
霧華は部屋から出る事をマリアに告げ、彼が来たと思われる道を引き返すように歩を進めた。
「こちらで良いのですか?お姉さま」
「構わない。今の状況で彼とやり合うのは得策じゃないから」
「確かにそうですけど、戻った場所に出口はあるんですか?」
「それを確かめに行くの。話はそれからでも遅くない」
マリアの言葉に対し、霧華は目を細めて平坦にそう言った。
確かに確認という意味であれば、来た道を戻るというのも悪くない事だ。
道に迷った際や行き止まりとなった場合では、成功法と言える行動だろう。
だが逆に言えば、取る必要の無い手間となって二度手間となる可能性だってある。
「……(お姉さまも珍しく慎重という事なのでしょうか?)」
先を進む霧華の背中を眺めながら、マリアはそんな事を心の中で疑問を浮かべた。
だがそんな慎重に見える霧華には、現状把握が最優先事項だという事を前提に動いている。
もし出られるのであれば、この場所が何処にあるのかも確認出来る事になる。
「マリア、松明とかを探してくれる?私も探すけど、暗くて全然見えない」
「分かりました。頑張って探します!私はお姉さまのメイドですから」
「灯りを探すのにメイドも何も無いと思うけど……?」
それは言わないで欲しかった、と思うマリアであった。
ガクリと項垂れるマリアだったが、気を取り直して灯りになりそうな物を探し始める。
霧華はその間、目を細めて状況把握に勤しむのだった――。




