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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第二章【可愛らしい獣は、毒の牙を隠す】
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『真夜中の出会い』

 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 行く当てなんかない。

だけど、走らずには居られない。止まる訳にはいかない。

止まってはいけない……。

今足を止めてしまったら、雑念に押し潰されてしまうから――。

薄暗い森の中から、勢い良く出た瞬間に目を瞑る。

視界を覆うほどの光に襲われて、目を開ける事が難しいからだ。

眩しいと思える光は、少女にとっての終着駅でもあった。


 「そんなに急いで、何処へ行くの?」

 「……っ!?だ、だれ?」


 咄嗟に受けた声に、少女は動揺したように問い掛ける。

振り返った先には、黒いドレスで身を包んだ少女が立っていた。

黒色で身を包んだその姿は、ゴシックチックに染まっている様子だ。

いやもしかしたら終着駅ではなく、寧ろ始発駅だったのかもしれない……。


 「珍しいね。目の色、違うんだね」

 「あ、えっ、と……きゃっ!」


 目を見ようと覗き込む彼女から、条件反射で離れようとする少女。

だが下がろうとした瞬間、自分の踵で躓いてしまう。しかし――


 「……大丈夫?」

 「は、はい」


 倒れる直前で、彼女に支えられてしまった。

抱き抱えてくれる彼女の顔が、全体的に良く見えるようになる。

落ち着いている人だ……そう少女は思う。

思うけれど、彼女と年齢的差は殆ど無いという勘が働く。


 「面白い物は見れたし、私はそろそろ家に帰る。……??」


 帰ろうとした彼女のドレスに手を伸ばし、少女は人差し指と親指でスカートを摘んだ。

それを見た彼女は、首を傾げて問い掛ける。


 「なに?スカートの下は気になるの?パンツしか履いてないから、期待には答えられないよ?」

 「ち、違うっ、違い、ます!」

 「(ジョークだったんだけど、真に受けられるとは思わなかった)――じゃあ何?私、今から帰るんだけど」

 「……っ」


 彼女に問い掛けに、少女は黙って俯いてしまう。

空腹を感じたまま、当てもなく一日を過ごせるか不安だ。

そもそも蓄えも何もない少女にとって、このいつまで続くか分からない状況を打破するのは難しい。

ドレスを引っ張られたまま、彼女を溜息を吐いて少女に尋ねた。


 「……一緒に来たいの?だったら来れば?」

 「え?」


 少女は反応に戸惑った。その戸惑っている間に、彼女はスタスタと歩を進める。

慌てて追いかける少女の様子を気配で察知し、後ろを見ずに彼女は口を開いた。


 「……霧華」

 「え?」

 「私の名前。名前が無いと不便でしょ?あなたは何ていうの?」

 「――マリ、と言います」

 「マリ……うん。分かった」


 これがマリと霧華の出会い。

そしてマリにとっての、最初で最期の憧れになるキッカケであった――。





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