表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
最終章【奴隷少女は、笑わない】
86/115

『霞んだ世界』

 ――体が動かない。


 思考回路から足の指先まで、全身を動かそうとしたが動かない。

霞んだ視界で周囲を観察し、霧華は自分の置かれている状況を確認する。

身動きが取れない様子で確認すると、霧華は個室の中だと把握した。


 身体を冷たくしている床に頬を付け、霞んだ視界のまま目を動かす。


 「……(何も、見えない)」


 部屋が暗い事は把握出来るのだが、霧華は個室の広さすら把握出来ない。

視界も悪く、思考も働く様子も無い。あるのは、自分が個室に居るという事だけ。

それしか把握出来ない霧華は、身動き出来ない状態で違和感を覚えた。

 

 「……(右腕、生えた?)」


 床に身体の部位を付けながら、自分の腕があるかどうかの確認をする。

だがやはり腕があるようには感じるが、それでも違和感が拭えない感覚があった。

その感覚を確かめようとするのだが、やはり身動きが取れない状態で不可能らしい。


 「……義手?」


 片腕を確かに失った記憶がある中で、その可能性を呟いた。

裏社会では義手義足で過ごす人間は、決して多くは無いが見に覚えがある。

そんな過去の記憶を参照しながら、霧華は自分の身体がちゃんと動くかを確認する。


 「(五感は平気っぽい。けど……右腕が動かせない)」


 義手であれば、リハビリを数日しなければ筋肉が馴染まないと話を聞く。

そしてリハビリをした記憶が無い霧華は、小さく息を吐きながらゆっくりと義手を動かした。

肩から指先へと順番に動かしていき、動く場所と動かない場所を感覚で覚えていく。

そんな事をしている最中、個室へと近寄る足音が耳に入って来た。


 「……(足音?誰)」


 足だけは動かせる事を理解した霧華は、足と壁を利用して姿勢を変える。

足音が聞こえる方へ視線を動かし、目を細めて個室の角へと背中を預ける。

その行動をしている間、霧華の視界は徐々に回復しつつあった。

やがて見えるようになった視界を見ると、同時に個室の入り口前で足音が止まった。


 『……』

 「……?」


 明りを点けず、個室の前でただ足を止める。

姿が見えない以上、誰なのかを理解する事は出来ない。

そう思いながら霧華は、目を細めつつも耳を澄ます。


 『……さま、……ですか?』

 「(この声……)」


 良く聞き取れなかったが、その声に見覚えがあった霧華。

その記憶を見つけた霧華は、入り口へと近付いてその声の主の名を呼んだ。


 「――マリア?マリアなの?」

 「お姉さま?良かった!無事なんですね」

 「無事がどうか分からないけど、けど生きてはいる」

 「そうですか。お姉さま、扉の前まで来れますか?鍵を渡したいので、近付いてくれませんか?」


 そんな言葉を聞いた瞬間、霧華は笑みを浮かべつつも声の聞こえる方へと移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ