プロローグ
――私が歩く時の空は、必ず泣いている。
私が泣く事が無いからなのか、頭上で雨を降らす。
灰色の空の下で、私はただ目的も宛ても無く歩を進める。
擦れ違う人間から視線を浴びるが、誰もが話し掛けようとはしてこない。
――私が見る世界は、必ず赤く染まっている。
行く先行く先で、私の視界は真っ赤に燃えている時がある。
この真っ赤に染まった手の平のように、私は途方も無く歩き続ける。
「……レイフォードさん!!待って!」
「……」
身体を冷やす涙を受けながら、背後から私を呼ぶ声が聞こえてくる。
今まで肯定も拒否もしなかった相手が、ずぶ濡れで私の前に立っている。
肩で息をしている様子から、きっと急いで走って来たのだろう。
「お姉さま、彼女を巻き込んでは駄目です。これから先、彼女はこちらの世界には……」
「……」
隣へやって来た少女がそう言うと、私はずぶ濡れの彼女を見つめる。
私が身を翻せば必ず追ってくると分かる程、彼女は既に足を前に出している。
そのまま近寄って来た彼女は、私の腕を掴んで来る。
――少女の言う通り、私は彼女を巻き込むつもりは無い。
だからこそ、私は掴まれた腕を振り払おうとした瞬間だった。
少女の手も掴んだ彼女は、私の腕を強く掴んで口を開くのであった――。




