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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第六章【血に染まる少女】
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『復讐だ』

 「良かったじゃねぇか。あいつ、お前を迎えに来たみたいだぜ?」

 「……」

 「せっかく口を塞ぐのを止めたんだ。オレの暇潰しに付き合えよ」

 

 ナイフの柄の部分で頬を押しながら、彼は私に悪戯をしてくる。

暇潰しをしたいのは分かるが、敵である人間と仲良くしてるつもりは無い。

それに人質に取られているというのに、その相手と話すなどする訳が無いだろう。

そう思いながら、口角を上げる彼へと視線を向ける。


 「……っ」

 「おぉ、反抗期かぁ?そんな睨んだって形勢は逆転しねぇよ」

 「……」

 「理解はしてる。なんて言いたそうな目だな」


 縛られた状態で、私は彼を睨んだ。

だが彼はへらへらと笑みを浮かべた末、私の顔の目の前にナイフを突き刺した。


 「言っとくが、お前を生かしてるのは利用価値があるからだ。利用価値が無いと判断した瞬間、お前の命は無いと思った方が賢明だ」

 「……お姉さまが私を助けに来るとは思えない」

 「現に助けに来てる状況で何を言ってるんだ?お前は」

 「傍から見ればそう見えるかもしれない。けれど、闇の世界はそんなに甘くない。私が捕まったのは私の落ち度という事になって、私はお姉さまに殺されるかあの人の元へ連れて行かれると思う」

 「なら、逃げりゃ良いじゃねぇか。何故そうしない?」

 「それは……」


 彼の問い掛けに答えようとした時、私は言葉に詰まってしまった。

何故、どうして自分の身を危険に曝してまでこの場に留まっているのか。

それについて考えた瞬間、彼女はともかくその上に居る人たちには恩義は全く無い。

寧ろ、皆無と言っても良かった事を理解した。


 「もしお前があいつの傍に居たいなら、それはお前の自由だし止めはしない。だが、絶対にいつか後悔するぞ」

 「……後悔なんて、お姉さまは私を助けてくれたのですよ?」

 「それが利用する為だったとしたら、お前にはもう自由は無ぇよ。それでも良いっていうなら、別にオレがとやかく言う権利は無い。だがお前がもし、自分の気持ちを押し殺したままであいつと居るなら、止めておけ。――すがっても、あいつは簡単に他人を裏切る人間だ」

 「っ……」


 そう言った彼の表情は、自然に下へと俯いてしまった。

その様子を見た私は、彼がどういう人間かという事を知らない事に気付いた。

彼がどうして、何故、彼女と対立しているのかも含めて詳しく無い事に。

そう思った私は、どうしてか。……気付けば口から声が漏れてしまっていた――。


 「貴方が、お姉さまを殺したいのは何故ですか?」

 「……復讐だ」

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