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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第六章【血に染まる少女】
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『誰も居ない部屋で』

 プルルルルル……。

鳴り響く電話のベルが聞こえ、少年は溜息を吐いた。

仕方なくという様子で立ち上がり、その電話を手に取る。


 「……もしもし」

 『……』


 耳に当てて呟いたが、電話越しに物音が聞こえない。

だが電話越しに人の気配はあっても、何も聞こえない状態だった。

少年は呆れた様子で嘆息し、腰を下ろして言葉を続けた。


 「何か用なのか?あいつの居場所なら突き止めたぜ」

 『……会えたのか』

 「会えたは会えたな。だが名付けされてるし、本当に奴隷になってるな。あれは」

 『孤児院に居た時からあまり変わらない状態だな。まぁ、元気にやっているようなら安心した』

 「あんたが会いに行けば良いだろ。何でオレに行かせたんだ?」

 『私が行けば刺激するだけだろう。下手に刺激するよりも、お前が行った方が得策だろう?』

 「オレが行った方が逆効果だと思うんだけどな。……まぁ、あんたよりは上手くやれる自信はある」

 

 電話越しに笑みを浮かべているのか、小さく笑って電話越しの人物は言った。


 『――確かにお前は数々の修羅場を越えたのだから、自信はあるだろうな。だがお前には本来、その知識は必要の無かった事なのだがな。わざわざ私に教えをうとは、全く珍しい子供だ』

 「……」


 電話越しに言われた事は、自分でも自覚しているのだろう。

少年は目を細めながら、奥の部屋へと視線を送る。


 「悪いけど、オレは今取り込み中なんだ。情報を得たいのならあいつの主人にでも直接聞けば良い。あいつを育てた親代わりのあんたとなら、あいつの主人も会う機会を作るかもしれないぜ?」

 『……私にそのつもりは無い。取り込み中ならば仕方が無い。また電話を掛けるとしよう』

 「……」


 もう掛けてくるなと思いながら、少年は電話を切った。

溜息混じりに奥の部屋へと向かい、目を細めて足元へと視線を送る。

その足元には、手首を後ろで縛られて転がっている少女の姿があった。


 「寝たフリか?随分と余裕だな」

 「……」

 「無視か。まぁ気絶しているフリはフリで良いけどよ、どうなっても知らないぜ?」

 「……」


 少女が起きている事は知っているが、少年は肩を竦めて部屋を出て行った。

キィと錆びた金属音が響き、少年の姿が見えなくなった瞬間に少女は目を開く。

目を開いた少女は周囲に視線を送り、グッと唇を噛んで悔しさを噛み締めていた。

誰も居ない部屋の中で、少女はただ一人取り残された状態で呟くのであった――。


 「……お姉さま、マリアは死ぬかもしれないです。……っ」

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