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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第六章【血に染まる少女】
71/115

『ゴーストと呼ばれた少年』

 「……」

 「…………何しに来たんだ?オレに何か用か?」


 霧華が柊美久の家で看病されている間、彼はレンと名乗る少年の元へ向かっていた。

通行人の姿が見えない深夜。彼らは誰も居ないヘリポート上で対峙しているのであった。


 「どうして無意味に殺したんだい?キミの目的は霧華だろう?」

 「霧華?……あぁ、あいつはそういう名前になったのか。あの時に名乗らなかったのは、単に名前が無かったってだけか」

 「ボクの質問に答えてくれるかい?生憎と無駄な時間を過ごす趣味は無いんだ」

 「オレが素直に質問に答えるような人間に見えるのか?」

 「……見えないね」


 レンの言葉に納得する彼だったが、質問の趣旨を変えて問い掛けた。

その問い掛け方は、交渉という言葉を投げるのではなく暴力での交渉だった。

距離と詰めるように駆け出した彼の動きを読むように、レンは笑みを浮かべてナイフを取り出す。


 「……無駄。オレにあんたの体術も殺傷術も通じない」

 「――ボクの事を調べたのかい?」

 「あぁ。同業者で知らない者は居ないっていうぐらいの情報で、あんたの事を調べてたら出て来たよ。ただその情報は全てブラフで、本当の情報を選別するのに骨が折れたけどな」

 

 レンの言葉を聞き、彼は目を細めてナイフを逆手に持つ。

軽くステップを踏みながら、レンの体格などの情報を脳内に取り込んでいく。

そしてステップで着地した瞬間、再びレンの元へと駆け出してナイフを振るう。


 「だから無駄だってば。あんたの事を調べた結果、興味深い記事を見つけた。内容はこうだ。――『発見、ダムの中に沈められた水死体。その数はなんと百体以上』ってな。かなり面白い記事だったから調べたら、ある人物を特定出来たんだよ」

 「……あはは、それがボクだという保証はどこにも無い。明後日の答えが出ている時点で、キミの負けだ。キミはボクの事について、何も情報を得ていない」

 

 ナイフを衝突させながら、火花を散らす中で会話をする彼ら。

だが彼の言葉を聞いた途端、ニヤリと笑みを見せたレンは言うのである。


 「そう急かすな。重要なのはこの水死体の発見場所ではなく、これを発見した人物だ。どうして誰も立ち寄る事の無いダムなんかに行って、水死体を見つける事が出来たのさ」

 「……」

 「答えは簡単だ。殺して、沈めて、見つけるまでがあんたのやり方だからだ。そうだろう?暗殺者のゴーストさん」


 ――ゴースト。

その名を聞いた彼は、逆手に持ったナイフをくるくると手元で遊ばせる。

やがてチャキンと音を立てて止めると、彼は思い切りレンへとナイフを投げた。


 「おっと……それが当たると本気で思ってるのか、よ?(姿が消えた?どこに?)」

 『暗殺者ゴースト、ね。確かにボクがそう呼ばれていた時代もあったけれど、それはもう昔の話だ』

 「……」


 ヘリポート上に彼の姿が見えないが、声が響くようにレンの耳に入る。

まるでその辺一帯が霧でも掛かっていると錯覚してしまう程、彼の姿を確認出来ないで居た。

靴音が反響するはずの無い空間で、反響している時点で不可解な状態。


 ――チャキ。


 「っ……!?」


 だがやがてレンの首元には、冷たい感触が添えられるのであった――。


 「味わってみるかい?かつてのボクのやり方を」

 「……っ」

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