表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第六章【血に染まる少女】
66/115

『探し者』

 あのニュースを見た瞬間、過去の記憶が視界を覆い尽くした。

かつて自分が暮らしていた孤児院の中で、私と共に暮らしていた子供。

孤児院の中には他の子供の姿もあったのだが、一番会話をしていたのがあの者たちだけだ。

その所為か、容姿を含めて声も良く覚えている。


 「……」


 一歩、また一歩と街中で歩を進めて行く。

朝のニュースで報道された場所へと向かうと、多くの人間が野次馬となっていた。

そんな様子を眺めながら、私は周囲の様子を確認した。


 「……(どこに?)」


 恐らく、この場所で誰かを殺した犯人は近くに居るはずだ。

私の知っている彼の性格上、きっと何処かで様子を伺っているはずなのだが……。


 「…………」


 周囲の人間から怪しまれないように、細心の注意を払って付近を出歩く。

だがしかし、彼の姿は何処にも無い。見当たらず、何処にも存在しない。

いくら遠くから見ていたとしても、殺意があれば判別出来る自信があったのだが……。

それでも、見つける事は出来なさそうだった。気配どころか、そんな視線も感じない。

普通なら引き返して、作戦を考えるべきなのだろうが……今はそんなつもりも無い。


 「(早く見つけて殺さないと……彼を生かしておく訳にはいかない)」


 そうなのだ。生かしておく訳にはいかない。

任務であれば作戦を練ってから、しっかりと最期まで殺すつもりだった。

だけれど、私は今すぐにでも彼の事を見つけたかったのだ。


 「……ん?携帯が……」


 私のスカートのポケットの中で、微かに何かが震えている感覚が肌に伝わる。

ポケットに手を入れてみると、そこには主人マスターから渡された携帯電話が震えていた。

長い様子を見ると、メールではなく着信なのだろう。

私は、その携帯を開いて画面に視線を送った。だが……。


 「???」


 そこには、知らない電話番号が映し出されていた。

主人マスターの番号でも、マリアの番号でもない知らない番号。

その番号をしばらく眺めていたが、私は出なくてならない気がして受話ボタンを押した。


 『やぁ、もしもし?久し振りだねぇ、元気だったかい?』

 「っ……」

 『そんな周囲を警戒したら、暗殺を生業としてるオレたちは失格だぜ?』

 「用件は何?」

 『急かさないでくれよ。せっかくの再会じゃないか。会話を楽しもうぜ?』

 「ふざけないで。貴女はどこに居る?答えて」


 私のそんな問い掛けを聞いて、小さく鼻で笑った声で彼は答えた。


 『ハッ……誰が好き好んで、自分から居場所を教える奴が居るんだよ。オレを殺したいなら、さっさと見つけるんだな?』

 「待って!」

 『今回は挨拶だけだ。――』


 ピッという音が耳元で響き、通話状態が終了状態となった。

私は自分の携帯電話の画面を見つめながら、また改めて彼を見つける事を誓うのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ