表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第五章【血に飢えた少女②】
64/115

『孤独と不安』

 「……殺さなきゃ、殺さなきゃ……」


 霧華は暗い部屋の中で、虚ろな瞳をしたままそう呟き続けている。

そんな様子を心配そうに扉の隙間から見つめ、マリアは困り果てていた。

だがその困っている内容は、彼女が虚ろな瞳をしているからではない。


 「……お姉さまの役に立つ。それが私がここに居る理由……あの人の為に出来る事は?」


 自問自答を繰り返す。

その自問自答の中で、霧華と初めて出会った時の事を思い出す。

彼女にとっての始まりであり、マリアの新しい人生の扉が開いた瞬間だった。

ならその場所へと居続けるには?その方法を探る為、彼女は霧華の傍に居座る事を決めた。


 「……どんな事をしても、私はお姉さまの右腕となる。たとえその腕を切り落とされれば足を差し出す。足を切り飛ばされれば目を……目が抉られれば私の頭脳を差し出すだけ。ただ隣に居る事が出来るのであれば、私はこの命を一生捧げる事を誓った」


 その誓いをどう証明するのか、それに対してマリアは思考を働かせる。

これからも彼女と、霧華という存在の影で在りたいが為に……。


 「――整いましたわ。お姉さま、今宜しいでしょうか?」

 「……」


 扉をノックし、閉まっている扉の奥からの返事を待つ。

だがそこで、マリアは一つの違和感を感じた。それは……。


 「(私、扉を閉めました?)」


 自分で扉を閉めたかを思い出せず、マリアの思考は停止し始めていた。

それは何故か、もしこの部屋の中に彼女が居なかったら?

そんな事を考えた瞬間、マリアは慌てた様子で扉を思い切り開けた。


 「……お姉さまっ!!」

 

 真っ暗な部屋。カーテンの隙間から明かりが見える。

だがその明かりを利用したとしても、見える視界のどこにもそれは存在しない。

彼女……霧華の姿はどこにも見当たらない。


 「お姉さまっ、何処へ?」


 彼女の姿が遠くなる様子が頭を過ぎり、マリアは目を見開いて寮の外へと飛び出す。

メイド服のまま、我を忘れた様子で学園の敷地内からも飛び出して街へと出た。

意識を集中させて、ただ一人を探す為に目を凝らして街を駆ける。


 「はぁ、はぁ、はぁ……(お姉さま、どちらに。どこに居ますかっ?)」


 不安。マリアの精神を徐々に侵食する感情の名である。

その感情が徐々に彼女の思考を鈍らし、やがてまともな判断力が出来なくなる。

街中でたった一人を見つけるというのは、情報の有無で差は大きく開いてしまう。

そんな簡単な基礎情報すら、もう既にマリアの頭の中には存在しないだろう。


 「(お姉さま、お姉さまっ……どこへ?どこにいるのですか!私を、マリアを一人に……独りにしないで下さいっ!!!マリアはお姉さまと、お姉さまと一緒にっ――)っあ……!?」


 不安という感情が限界に達し、マリアはその場で蹴躓けつまずいてしまう。

倒れたままマリアの頭の中には、『独り』という言葉が埋め尽くされていく。

霧華かのじょの姿が離れていき、頭の中ではゴチャゴチャになりつつあったその時だった。


 『どうしたんだい?キミが一人で居るなんて、珍しい状況じゃないか。いつもは彼女にべったりなのにさ』

 「……?」

  

 誰の声かと思いつつ、聞いた事のあるような声に顔を上げたマリア。

そこには、霧華の主人である彼女と共に行動する少年の姿があったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ