表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第五章【血に飢えた少女②】
61/115

『生贄』

 マリアの前に居る彼女、霧華の中に居るもう一人の彼女が現れた一方。

彼女たちの知らない所で、任務の状況は大きく変化しようとしていた。


 「……どうするつもりだい?ジェシカ。君がしたい事に文句を言うつもりは無いけれど、本当に彼を信じて良かったのかい」

 「良いも何も無いわ。あれは私の気まぐれですもの。それに問題も生じるようなヘマをするなら、私はここには存在してはいないわ」

 「……それもそうだね。それで?彼は使えそうかい」

 「予想以上に身体能力が高いけれど、それでもあの子には遠く及ばない。頭脳戦となった場合なら勝率は上がるけれど、どうかしら。あの子もあの子で勘が鋭い部分もあるし、五分五分かしらね」


 モニターに映る二枚の人物写真。

一枚は霧華であり、もう一枚には少年の写真が映し出されている。

彼女たちはそれを眺めながら、そんな会話を交わしている時だった。

この彼女たちの行動が、彼女キリカの行動にも影響が出る事を本人キリカたちは知らない。

だからこそ、ジェシカは笑みを浮かべて小さく呟くように言うのであった。


 「さ、私たちは私たちの仕事をしましょうか」

 「そうだね。まぁ来るべき時に備えるだけだけどね」

 「変わらないわ。彼女は必ず来る。私の元に……その時が歯車が動く時ですもの」

 「こちらとしては、動いて欲しくないものだけど……君が言うなら仕方が無い」

 「協力は感謝しているわ。けれど、貴方が責任を感じる事は無いの。全ては私が行う事なのだから」


 ジェシカはそう言って、目の前の少年に笑みを向けた。

溜息混じりにそんな彼女を眺め、少年は彼女の後を追う。

だが少年は思うのである。何度も何度も繰り返して、それでも答えは出さずに居た。


 「(霧華。君が来てから、彼女は嬉々としている。だけど、それがボクとしては気に入らないな。いつか、ボクとも決着を付けなくはならないけど……ボクが殺すまでは死なないでくれると嬉しいよ)」


 そう思いながら、少し遠くなったモニターを眺める。

そのモニターに映る彼の姿を見つめ、少年は先に向かったジェシカの後を追い直す。


 「(それまでは、彼と踊るといい。血と涙でつづられた鎮魂歌レクイエムを。霧華、慰めの時は近いよ?)――」


 少年と彼女は、その場所から姿を消した。

その数分後、扉が思い切りに開けられて黒服の男たちが飛び込んだ。

監視カメラ越しにそれを確認した少年は、先を歩く彼女に告げるのであった。


 「ジェシカ、まずは君に生贄を捧げるとしよう。見てごらん?綺麗な花火だろう?」


 そう言いながら、闇夜の空へと昇る炎を瞳に映すのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ