『ポーカーって分かる?』
「お姉さま、詳しく聞いても宜しいでしょうか!」
「マリア、声大きい。何を焦っているの?」
「いや、焦りもします。というか、気が動転していて何処から指摘すれば良いか分かりません」
「ならこの話はもう終わりにして、早速何かして遊ぼう。美久、何したい?」
「あ、え、ええっと……」
ムスッとした様子のマリアを放置し、霧華は美久に何をするかを問い掛ける。
四つん這いになりながら、床に手を付いて近付く霧華。
そんな彼女の様子を見ていたマリアは、頬を膨らまして美久と霧華の間に割り込んだ。
「……」
「マリア、狭いんだけど」
「あ、あはは……(ヤ、ヤキモチなら可愛いんだけどなぁ。多分、違うかも)」
美久の予想は的中していて、マリアは霧華の無防備な行動に苛立っていた。
といよりかは、まずは状況を把握する必要があると思っていたマリアだった。
何故なら、殺し屋という事を知っていると標的である彼女から進言されてしまったのだ。
これがもし、主人である彼女に伝わったら怒られるだけの話では無くなってしまうだろう。
「お姉さま、まずは説明を。これは非常事態です。お分かりですか?」
「……マリア、何を怒ってるの?これも任務の一環だと思えば、良い話じゃないの?」
「それとこれとは場合が違います。それに……」
何か言いたげな表情を浮かべながら、マリアは美久へと視線を動かした。
ムスッとした様子でもある中で見られれば、美久は苦笑するしか対応の余地は無い。
そんな彼女の姿を真っ直ぐに見据えると、マリアは矛先を霧華から標的をチェンジした。
「貴女も貴女ですわ。どうして殺し屋だと言われたにも関わらず、どうしてお姉さまと距離を置こうとしないのですか?普通は警戒して、距離を作るところではありませんの?」
「い、いやぁ~、あははは~」
「笑い事ではありませんの。全く、お姉さまにもしもの事があれば、真っ先に疑われるのは私なのですよ?少しはその無防備な状態から改善して下さいまし。分かりましたか、お姉さま?」
マリアがそう問い掛ける為、視線を美久から霧華へと戻した。
戻したのだが、肝心の霧華の姿が見当たらない。そう思い、周囲を探った。
すると霧華は、マリアの視覚の死角を通って美久の隣へと並んでいた。
「――トランプで良いよね。ポーカーって分かる?」
「うん、分かるよ。私、下手なんだけど大丈夫かな?」
「大丈夫。簡単だから」
「無視しないでくださいまし!!!」
マリアの怒りゲージを振り切ったのか、ついに我慢の限界に達した。
霧華へと怒鳴った瞬間、ハッとした様子で口元を自分の手で塞いで霧華の事を見つめる。
ボーっとしていた霧華だったが、溜息混じりにマリアにカードを差し出したのであった――。
「私に勝ったら、マリアの話を聞いてあげる。本気で潰してあげる」
「っ……お、お手柔らかに頼みますわ」




