『たったひとり』
「お姉さま?……朝ですよ?早くしないと遅刻しちゃいますよ?」
「んん~……あと、五分」
「ベタベタな寝言をありがとうございます。そんなお姉さまをもっと堪能したい所ですが、本日は決行すべき案件があります。さ、起きて下さい」
無理矢理に毛布を剥ぎ取られて、私の顔には太陽の日差しが直撃する。
それに耐えられなくなった私は、布団のシーツを外して自分を包み込んだ。
「あ、お姉さま。そんな事をされたら、シーツがぐしゃぐしゃになっちゃいます!今日はどうしたんですか?偉くご機嫌が斜めのようですが……ま、まさか……また柊美久に何かされたのですか!?」
「ええ……何でそうなる」
「違うのですか?」
「……さぁ?」
マリアに質問されて考えてみたが、自分が何故こんなに起きるのが嫌なのかが不明だ。
曖昧なのか、それとも本当に何も分からないのか。恐らくは後者だと思われるこの感覚。
その感覚を良い事に、私はそれを利用する事にした。特には理由は無い。
ただ考えるのが面倒という事を思った結果である。
「マリア、朝ごはんは?」
「勿論、出来ています!さぁさ、お姉さま!こちらへ♪」
「そうなんだ。何でこんなに多いの?」
テーブルに大きく広げられた料理の数々。
それは朝から食べられるようなボリュームではない事を分かっているのだろうか。
朝食でハンバーグまで食べる人は居るかもしれないが、私は見ただけで胃もたれしてしまう。
「ごめんマリア。見てるだけでお腹いっぱい」
「えぇ!?お、お姉さま?ま、まさかこのまま登校するつもりですか?」
「だって、多い」
「うぐっ……た、食べてくれないのですか?お姉さまぁ~」
泣き崩れるようにして、着替え終わった服にしがみ付くマリア。
鬱陶しいと思った事は言わないで置きつつ、私は溜息混じりに皿に乗っているパンを掴んだ。
「……はむ」
「お、お姉さまっ」
「ふぁふぃひふぃふ(先に行く)」
「はいっ!お姉さまは、やっぱり優しいです!」
ぱあっと輝く笑顔を真っ直ぐに向けられ、私は逃げるように寮の外へと出向いた。
周囲には同じ制服を着た女子生徒が視界に入り、自分もその中の一人なのかと考えてしまう。
「あむあむ……ん、少し冷めてる」
そんな事を呟きながら、同じ制服を来た生徒たちを眺めて歩く。
この中で私の正体に気付き、それを暴こうとする生徒は何人居るだろうか。
全く気付かず、私を同じ学び舎に通うただの生徒だと思う者が殆どだろう。
「あ、おはよう!レイフォードさん!」
「……おはよう」
だが彼女……柊美久だけは、私という存在を知っても関わろうとする人間だった――。




