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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第五章【血に飢えた少女②】
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『蜘蛛の巣』

 『少しだけ、休憩しましょうか?貴女も喋り過ぎて、疲れているでしょう?』

 「……少しだけ。だけど、大丈夫。まだ……話せ、る……」

 『だーめ。ほら、ゆっくりお休み?また明日にでも、教えてくれるだけ良いわ。貴女とわたしは一心同体。いつでも一緒なのだから、安心して良いわ』


 霧華は自分自身の投影である彼女の言葉に従い、すぐに眠りへと誘われた。

倒れるように寝転がった霧華の頭に手を添えながら、彼女は目を瞑って口を開くのだった。


 『貴女が寝ている間、わたしは散歩に出掛けてるわね?少し、その身体を借りるわ』

 「…………」


 スッと幽霊のように身体を重ねた瞬間、霧華はゆっくりと閉じた目を開ける。

ゆっくりと身体を起こしてから、一度自分の腕や足に触れて何かを確認している。

それはおそらく、定着しているかどうかの確認だろう。キリカ・レイフォードという存在の。


 「さぁ、散歩に行きましょう。今夜は月が綺麗だから」


 霧華を寝ている事を確認したキリカは、同じ身体を使って外へと出向いた。

自分の言った言葉を確認するかのようにして空を見上げると、空には闇夜に輝く月が見え隠れする。

その様子を確認したキリカは、輝く月の下で笑みを浮かべながら歩を進めた。


 「~~♪」


 真っ暗な空の下で、キリカは鼻歌混じりにスキップして道を進む。

外を歩ける事が嬉しいのかと錯覚してしまう程、キリカの動きには軽やかさがあった。

そんな事をしていると、背後から人の気配をキリカは察知した。

振り返らずにその気配を見つけ、ニヤリと小さく口元を緩めたキリカ。


 「(深夜だというのに、お仕事熱心な方。どんなお方かしら)」


 そんな事を思いつつ、キリカは闇夜が深いと思われる路地裏へと身を消した。

背後から迫って居た人影は、それを追うようにして同じ路地へと姿を消す。

だがその人影は足を止めて、路地へ入った状態で硬直していたのだった。


 「御用は何かしら?わたしは今、優雅なひと時を過ごしたいと思っているのですが?それを邪魔をするおつもりならば、覚悟があると思って宜しいでしょうか?」

 『…………』


 人影はクスっと笑みを浮かべると、胸元からそっとナイフを取り出した。

月の光によって光るそれは、綺麗な白色の中でも不気味な空気を一緒に纏っている。

その空気はおそらく『殺意』と呼ばれる感情が見えているから。


 『……!』

 「あら、危ない。いきなりそんなモノを振り回さないで下さるかしら。思わず手が出てしまうでは無いですか。フフフ……」

 『っ……!?』


 キリカはそう言いながら、不気味な笑みを浮かべた。

人影が後ろへと下がる直前、地面に何かが落ちる音が耳に入る。

その音を辿った瞬間、人影は『死』を確認したのであった。


 「首をねれば、人間は死ぬのですよ。お客様♪」

 『……』


 キリカは倒れた人影に近寄り、深くお辞儀をして立ち去った。

雲に遮られた光が差し込んだ瞬間、路地には蜘蛛くもの巣のように張り巡らせた糸が輝いていた。


 「わたしは、私自身をお守りしますわ。ご主人様、フフフ♪」


 そう小さく呟くと、キリカは闇夜に姿を消したのであった――。

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