プロローグ
灰色の空の下。雲の切れ間から太陽の日差しは薄く出て来ている。
その空はまるで、今の自分の気持ちを表したようにも思える程に灰色だ。
何も考えず、何も思わず、何も感じず、何も生まず、何も……望まない少女。
――それが私という人形であり、『キリカ・レイフォード』という人間だろう。
自分自身がどういう人間なのか、何の為に生きているのかすら分からずに居る。
何の為に生まれて、何の為に死んでいくのか。それがまだ分からない。不明のままだ。
霧華という存在が生まれても、自分では何をしたら良いのかなんて分からない。
ただ命令のままに動き、ただ成すがままに行動する。ただの人形と変わりないものだ。
「……どうしたのですか、霧華?私の顔に何か付いていますか?」
薄暗い部屋の中で、揺れる蝋燭の灯が視界に入る。
私の主人である彼女がニヤリと笑みを浮かべ、ただ両手を大きく広げてその時を待った。
やがて灰色の空から雨が降り注ぎ、雷の音と共に私は彼女へと駆け出した。
「お行きなさい、霧華。貴女はこれで、自由になったのだから……」
「……マ、マスター……ごめんなさい」
水溜まりが赤く染まっていく中で、私は小さく謝罪を繰り返す。
何度も、何度も、何度も……後悔と燃え尽きる感情の中で、私は大粒の涙を流すのだった。
私自身が前を行く為、自らの選択を呪いながら……私は誰かに手を引かれるのであった――。




