『脱出ゲーム』
『へぇ、このお嬢ちゃんがおやっさんの言ってた奴か』
『……普通の子供じゃねぇか。大丈夫なのかよ?』
彼らはトランプをしながら、ヘラヘラと笑ってそんな事を言った。
確実で煽りだろうと感じたが、私は何とも思わなかった。
正確には、何とも思う余裕が無かったといえば良いだろうか。
「…………」
誰一人として、信用が出来そうな人間が居ない。
だからこそ、私は彼らの雰囲気から恐怖を感じていた。
だが……。
「……?」
彼は何も言わずに私の頭に手を乗せた。
そして、ニッコリといつもの優しい笑みを浮かべたのである。
その笑みを見た瞬間、私は感じていた恐怖心が和らいでいった。
「……」
『お嬢ちゃんの部屋は一番奥だ。この部屋を自由に使って良いが、勝手な出入りは禁止だ。良いな?』
「はい……」
案内された部屋は、孤児院で案内された部屋に良く似ている。
薄暗く、微かに汚れたベッドにコンクリートに囲まれた四角い部屋。
まるで囚人を収容していたのかと思う程、狭くて不気味な部屋だ。
「……ここが、私の部屋」
床に触れると、ザラザラとした感触で手の平に広がる。
ベッドのシーツは少し古くて、けれど寝られる事は無いが汚れている。
男しか居ないからなのか、掃除をしている風でも無い。
「……少し、掃除しようかな」
そんな事を思いながら、私はふと日用品だと渡されたバッグが視界に入る。
このバッグは、ここでの生活品が入っているとあの人に渡された物だ。
そのバッグの中身を見てみると、私は目を見開いて手が止まってしまった。
「これって……!」
バッグの中に入っていたのは、無線機が一個とナイフが一本、手榴弾が三つ、銃が一丁。
そして非常食と思われる物が、数個とペットボトルに入った水が二本。
これで数日を過ごせという事なのかと思ったが、私の予想はその日の夜に裏切られる。
――ブ……ブッ、ブー……ザー、ザー……。
時計がこの部屋には存在しないが、恐らく真夜中となった時間帯だろう。
その誰もが寝静まる時間帯で、バッグの中から念の為に出して置いた無線機から音が漏れる。
『……皆の者、おはよう。起きている者、寝ている者を含めて参加してもらう』
「この声って、あの人の?」
『その前に軽くだが、ルールを説明しようと思う。皆、部屋の中には換気の為に用意している排気口があるはずだ。確認して欲しい』
「……あれかな?」
部屋を観察すると、天井に一つだけポツンと存在している排気口。
『見つけただろうか?……ではこれより、ゲームを開始する』
「ゲーム……?」
そう言われた瞬間、排気口からシューと音を立てて煙が入り込む。
その煙は薄緑色で、一目で身体に有害だという事を理解したのだった――。
『今から一時間以内にその部屋から脱出してもらいたい。では健闘を祈る』
「っ!?」




