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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第四章【血に飢えた少女】
39/115

『起床。そして着信』

 カーンカーンカーンカーン……。

鳴り響いた鐘の音が耳に入り、目を擦りながら朝を迎えた霧華。

久し振りのベッドを味わった所為か、まだ少し眠気が取れないで居た。


 「あ、起きたみたいだぞユキ」

 「ホントだ。えっと、おはよう。そろそろ起きないと、シスターに怒られるよ?」

 「…………?」


 寝惚けた頭のまま、昨日までの出来事が整理されていく。

やがて頭の中での整理が終わった瞬間、霧華は一つだけ疑問に思った事を脳裏に浮かばせる。


 「ん、どうしたの?」

 「え、えっと……おはよう、ございます」

 「うん、おはよう!」

 「何だ、ちゃんと挨拶出来るんじゃねぇか」

 「だから言ったじゃん。疲れてるだけだよって……」


 自分の言葉が、彼らに差異も無く伝わっている。

その様子に驚きつつも、彼らの事を『日本人』とは思う事は無いだろう。

それは簡単な理由で、彼らの容姿を上から下まで見た結果である。


 「……改めて、俺はレン。よろしくな」


 自分に親指を立てて、名乗るように挨拶する少年。

彼はレンと呼ばれていて、その赤い目と灰色の髪は異様にも思える。


 「私はユキだよ。よろしくね」


 少し身を乗り出して、ニコッと笑みを浮かべる少女。

ユキと名乗るその少女は、鮮やかな金髪と緑色に輝く瞳をこちらへ向けている。

その二つの理由から、霧華は彼らの事を日本人とは思えなかったのである。


 「よ、よろしくおねがいします……?」


 霧華はそう言いながら、首を傾げて不安そうに彼らを見た。

そんな挨拶をしているうちに、彼らは『そろそろ行こうか』と言って霧華の手を引く。


 「どこに?」


 そう問い掛ける霧華に答えるようにして、レンとユキは顔だけを少し振り返らせて言った。


 「お仕事だよ!」「仕事だぜ!」


 外へ手を引かれたまま出ると、そこには武装したシスターが居たのだった――。


  ◇◇◇


 『キリカさんは今まで、どこで何をしていたの?』


 そんな質問をした事を思い出しながら、湯気に包まれた天井を仰ぐ。

肩まで沈ませて湯船へと浸かりながら、私は人生で何度かしか吐かないであろう溜息を吐いた。

これで何度目なのだろうと思いつつも、深い溜息を吐いて目を瞑った。


 「キリカさん、困ったような顔してたなぁ。聞いちゃいけなかった事なのかなぁ。帰国子女さんだから、色々な事が聞けると思ったのになぁ。ちょっと残念……」

 『美久~!いつまで入ってるの~!早く出て来て頂戴?』

 「お母さん?……は~い」


 浴室から向こう側へと届けようと、出来るだけ声を出して返事をした。

浴槽から身を乗り出して、水音を立てながら浴室から外へと出る。

微かに涼しい風が身体に当たり、タオルを巻いてドライヤーで髪を乾かす。

そんな事をしている最中だった。着替えの上に置いておいた携帯が震え出した。

私はその画面表示を見て、思わずその差出人の名を口にするのだった――。


 「……レンくん?」

 

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