表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第四章【血に飢えた少女】
38/115

『無愛想な少女』

 微かに覚えている記憶の中で、幼い頃の私と同じぐらいの少年少女。

その彼らと出会ったのは、私が新しく暮らす事に初めての場所。小さな記憶。

どうしてこんなに曖昧に言うのかは、私自身がこの記憶に自信が無いからである。


 『わたしか貴女の記憶。どちらの記憶なのか、それを心配しているの?』

 「…………」


 周囲が真っ暗な空間で、部屋の中でもない知らない場所。

グラグラと意識がグチャグチャになりそうなまま、私の目の前には同じ姿の彼女が現れた。

鏡合わせにしたように見える姿は、目を疑う程に瓜二つ。私の容姿そのままだ。


 『あの子たちの事を覚えてるのなら、その話をわたしに聞かせて?もう少し貴女の話を聞きたいわ?』

 「……私の、話?……これは、私の記憶?」

 『そう。わたしの意識は、そこでは生まれてないわ。わたしの知らない記憶なのだから、少しぐらいは教えてくれても良いじゃない。ね?』

 「…………分かった」

 『じゃあ、聞かせて。まずは、その子たちが誰だったのか。――……』


 

 ――霧華が連れて来られた孤児院には、名前は無い。

家も親も持たない子供たちが集められ、そこで衣食住を共にしている場所だ。

他に誰かが居るという事を理解させるようにして、霧華の暮らす事になった部屋。

そこで、同じ年齢ぐらいの少年少女と出会ったのである。


 「……だれ?」


 霧華は首傾げながら、彼らにそんな事を聞いた。

至極当然な事なのだが、誰だか分からない事を直球に聞いてしまう。

それが当時の彼女であり、まだ無邪気だった霧華という証明かもしれない。


 「ほら、レン。いきなり強いか?って聞かれたら、誰だってこうなるわよ」

 「なっ、オレだけの所為なのか!?」

 「当然よ。強いのか弱いのかとか、女の子に求めないで欲しいもん。ねぇ♪」

 「…………?」


 レンと呼ばれる少年の除け者にして、『ねぇ♪』と同意を求められても困る。

そんな事を思いながら、霧華はベッドへと入って寝転がってしまった。

その様子を眺めていたレンは、ムスッと表情を浮かべながら霧華の事を見た。


 「疲れてるんでしょ?今日はゆっくりさせてあげようよ、レン」

 「……女だからって挨拶をしないとか、れーぎ知らずなヤツ」

 「……すぅ……」


 彼らがそう話している間、やがて寝息を立ててしまった霧華。

そんな霧華を放って置いて、彼らも自分の布団の中へと潜り込んだ。

こうして霧華にとって、孤児院生活の初めての夜が過ぎていくのであった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ