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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第四章【血に飢えた少女】
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『幼き少女、孤児院へ』

 自分のして来た事を思い出した時、生々しい感覚だけが蘇る。

それは『匂い』『感触』『雑音』……それらを含めたモノが頭の中で混ざり合う。

そんな事を思い出す度、私の喉の奥には胃酸が混ざった唾液が舌へと絡みつく。


 「……はぁ、はぁ、はぁ……っ」


 私の手を引いた彼が向かった先は、私と同じぐらいの少年少女が居た。

そこは孤児院のような場所で、私を含める全員が身寄りの無い子供たちという事らしい。

孤児院で働いているシスターを含めて、その場に居る人たちは柔らかい雰囲気を纏っていた。


 『ではこの子を宜しくお願いします。後日、また伺いますので』

 『はい。承りました。さぁさ、どうぞ入って?可愛らしいお嬢さん』

 「…………(コクッ)」


 幼い頃の私は少々人見知りがあり、男の後ろからシスターの様子を伺っていた。

やがて怯えながらではあったが、私はその孤児院の中へと足を踏み入れる。

すると男のお辞儀と共に動き出した扉は、ゆっくりと出口を閉じていくのである。

ニコリと笑みを浮かべて手を振る男を眺めていると、幼き私は違う人に手を引かれるのであった。


 『さぁお嬢さん、お前さんの部屋はここだ。好きに使うと良いよ』

 「……好きに?」

 『あぁ、そうさ。今日からこの部屋とこの場所が、お前さんの暮らす場所だよ』

 「…………ありがとう、ございます」

 『今日はもう遅いから、もう寝ると良いよ。じゃあね、また明日』

 「……おやすみなさい」


 私がそう言うと、シスターはこちらを見ずに手を振って去っていった。

用意された部屋の中へと入ると、そこは二つの二段ベッドが両側に設置されている。

その中にある畳まれている布団があり、その布団の上には着替えも用意されていた。


 「これに着替えれば良いのかな?」


 一人でそう呟きながら、私は用意された服に着替えてボロボロの服を綺麗に畳んだ。

用意されていた布団はふんわりしていて、手や足を入れればすぐに温かくなっていく。

そう感じた私は、それだけで嬉しくなって笑みを浮かべていた。


 「……」

 『何を一人で笑っているの?』

 「ひゃっ!?」


 布団の温もりを楽しんでいた時、咄嗟に聞こえてきた声に驚いて声を上げてしまう。

自分でも出した事の無い声で、思いのほか受けた相手もびっくりしていたのに気付く。

だが気付いた事はそれだけではなく、後ろに立っていた人物の他にもう一人居る事に気付いた。


 『お前が新しい奴か、なんか弱そうな奴だな』

 『何を言ってるのよ、女の子なんだから当然でしょ?』

 「…………?」


 目の前に現れた少年と少女。

彼らはいったい誰なのか、そんな事を思った私なのであった――。

 

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