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プロローグ
「わたしは……だれ?」
『あなたは……わたし』
血塗られた真っ赤な世界の中で、赤い水溜りに映る自分の顔。
返り血を浴びた頬から滴る赤い滴の先には、笑みを浮かべる自分が居た。
手にはナイフを持ち、目を細める少女の足元には――
大量の死体が寝転がり、その光の無い瞳は少女を見据えていた。
『後悔しなくて良いんだよ?これはあなたの責任では無いの。あなたを見捨てたこの世界が悪いもの。さぁ、もっともっともっともっと降らせましょう?赤い血で作った雨に当たるのは、格別で気持ち良いものよ』
「……わたしは、だれ?」
『名前なんてどうでも良いもの。そうねぇ、もし必要とするのなら次からこう名乗るとしましょうか』
自分と同じ姿の少女が、自分の顔に付いた血を舐める。
体を指でなぞっていき、上から下へと手を滑らせていく。
そうしながらも、彼女は度々目が合うと笑みを浮かべるのだ。
『――キリカ・レイフォード。これが私たちの名前よ?』
「…………」
それが私の始まりであり、生まれた瞬間だった――。




