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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『キリカ・レイフォード』

 「――ここに来る前は、何をしていたの?」


 そんな事を問い掛けられた瞬間だった。

霧華の内側で、彼女ではない誰かが笑みを浮かべた気がした。

その笑みが浮かんだ途端、霧華の中で何かが切り替わる。


 「……キリカさん?」

 「…………」

 

 俯いた霧華を心配し、美久は顔を覗き込ませる。

酷く動揺していて、霧華は目を泳がせている様子だ。

美久はこれ以上は心配し、その日は遊園地を後にしたのであった。


 「あ、お帰りなさいませ、お姉さま!……??お姉さま?」

 「…………」


 自分の部屋へと向かう霧華は、マリアの声すら届かない様子だった。

そんな彼女はゆっくりと歩いて、浴室へと向かってシャワーを浴びる。

薄暗い部屋の中から、首を傾げて様子を見るマリアは思考を動かした。


 「まさか、柊美久がお姉さまに何か?だとすれば、やはり即刻消さないといけない」

 『…………ふふふ』

 「お姉さま?」


 小さく笑っているような声が、微かに浴室から聞こえてくる。

シャワーの音と同じくらいで、掻き消されそうになっているが聞き取れる。

そんな声で笑みを浮かべている霧華は、自分の映る鏡を見て笑っていた。


 「……ふふふ、霧華、大丈夫よ?私があなたの気持ちを楽にしてあげる。不安、心配、憂い、危惧を含むもの全て……私が消してあげる。全部全部全部全部全部……あなたの為に消してあげる♪」

 「…………」


 浴室の扉に映るシルエットを眺め、マリアは身を隠して口を塞いだ。

見た事の無い彼女の様子を見た瞬間、見てはいけないものを見てしまった気分だった。

マリアはそのまま自室に戻って行って、塞いでいた口から手を離して呟くのである。


 「あれは……いったい……お姉さまの身に、何が?」

 「さぁ……何があったと思う?」

 「――っ!?」

 

 マリアが呟いた瞬間、彼女の声が耳元で囁かれる。

音も無く、部屋の扉も閉めていたはずだとマリアは思った。

だがしかし、今の彼女には関係無いのだ。意味の無い行動でしかない。


 「ど、どうして?ドアは閉めたはずなのに」

 「鍵まで閉めないと意味無いよぉ~、マリア?まぁ鍵を閉めた所で、私には効果は無いけどね」

 「……っ……あ、あなたは誰なのですか?」

 「あれ?霧華はお姉さまって呼んでくれてるのに、私の事はそう呼んでくれないの?」

 

 マリアは近寄る霧華に対し、怯えた様子で身を引いている。

そんな様子を見た霧華は、口角を上げながら同じ目線になるように四つん這いになった。

そして目を細めて、顔を近付ける彼女はマリアの耳元で呟いたのだった。


 「……っ」

 「じゃあ今日は自己紹介だけ。私はキリカ・レイフォード、宜しくね?マリア」

 「その名前は、お姉さまの偽名で……ほむっ!?」


 顔を見合わせてマリアが指摘した瞬間、キリカと名乗った霧華は唇を重ねた。

やがて離れた彼女はニヤリと笑みを浮かべ、マリアの頬に手を添えるのだった――。

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