『微かな変化』
約束の放課後。
言葉だけを聞くと、恋仲が会うようなニュアンスとなるだろう。
だが私は、そんなのは創作の中だけだと思っている。
自分の身体に流れる血が、腕や足が縛られている間は無縁な話だ。
――この鎖が解かれなければ、無縁な話である。
「お待たせぇ」
「…………」
そんな事を思っていると、約束の相手がやってきた。
手を振りながら、急いで来たような雰囲気で手を振っている。
「はぁ、はぁ……待ちました?」
「……別に」
「それじゃ、行きましょうか!」
「ん」
相槌を打つようにして返事をし、彼女の後ろに着いて行く。
特に私からは用事は無く、今日あった出来事を彼女が笑顔で話している。
話している間は疲れないのか、ずっと喋り続けている。
「……」
「さぁ、到着です!じゃん、今回は遊園地に来て見ました!」
「見れば分かるけど」
「あ、はい」
外観だけで見える大きい観覧車が目立ち、周囲に居る者たちが騒いでいる。
ここに居る者たちは皆、その目を輝かせている様子にしか見えない。
私には、遠い場所だ。
――無縁な場所だ。
「あ、あの……どれを最初に行きますか?」
「任せる。私は貴女に着いて行くだけだから」
「そうですか?う~ん……えっとレイフォードさんは」
「キリカでいい。呼び辛そうにしてるのが丸分かりだから」
「あ、じゃあキリカさんで!……えっと、まずはあれに行きましょうか♪」
私は目の前に手を出されて、思わず首を傾げてしまった。
その様子が不思議なのか、それともオカシイのか。
彼女は笑みを浮かべて、私の手を取って言うのだった。
「さぁ、早く♪今日は、自由なんですから!」
「……自由?」
「そうですよ?放課後ですし、明日は学校が休みなんですから。パッと遊びましょ!」
「……遊ぶ……自由……???」
手を引かれながら、彼女の言った言葉が耳に残る。
やけに残るその言葉は、なんだか酷く私の心を揺さ振られた。
連れて行かれる場所が、子供っぽいと思ってしまうが……。
「……ふふ」
「っ!?」
「何?」
「キリカさんっ、もっとそういう顔をしましょ!」
「いきなり何?」
彼女が急に身を乗り出しながら、そんな事を言った。
キラキラと目を輝かせて、彼女の顔が至近距離になっている。
「ふふふ、じゃあ何でも無いです♪楽しんでくれてるようで、嬉しいですよ♪」
「楽しんでる?私が……」
ふと言われた言葉を聞き、自分の胸に問い掛けるように触れる。
鼓動が脈を打ち、ややいつもより動悸が早い気がしなくもない。
どうしてだろうかと考えていると、彼女がまた私の前に笑みを浮かべて立つのだった。
「キリカさんっ、行きましょ♪」
「……ん」
さぁ、と私へと差し出された手。
私は少し躊躇しながら、彼女の手を握るのだった――。




