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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『微かな変化』

 約束の放課後。

言葉だけを聞くと、恋仲が会うようなニュアンスとなるだろう。

だが私は、そんなのは創作の中だけだと思っている。

自分の身体に流れる血が、腕や足が縛られている間は無縁な話だ。


 ――この鎖が解かれなければ、無縁な話である。


 「お待たせぇ」

 「…………」


 そんな事を思っていると、約束の相手がやってきた。

手を振りながら、急いで来たような雰囲気で手を振っている。


 「はぁ、はぁ……待ちました?」

 「……別に」

 「それじゃ、行きましょうか!」

 「ん」


 相槌を打つようにして返事をし、彼女の後ろに着いて行く。

特に私からは用事は無く、今日あった出来事を彼女が笑顔で話している。

話している間は疲れないのか、ずっと喋り続けている。


 「……」

 「さぁ、到着です!じゃん、今回は遊園地に来て見ました!」

 「見れば分かるけど」

 「あ、はい」


 外観だけで見える大きい観覧車が目立ち、周囲に居る者たちが騒いでいる。

ここに居る者たちは皆、その目を輝かせている様子にしか見えない。

私には、遠い場所だ。


 ――無縁な場所だ。


 「あ、あの……どれを最初に行きますか?」

 「任せる。私は貴女に着いて行くだけだから」

 「そうですか?う~ん……えっとレイフォードさんは」

 「キリカでいい。呼び辛そうにしてるのが丸分かりだから」

 「あ、じゃあキリカさんで!……えっと、まずはあれに行きましょうか♪」

 

 私は目の前に手を出されて、思わず首を傾げてしまった。

その様子が不思議なのか、それともオカシイのか。

彼女は笑みを浮かべて、私の手を取って言うのだった。


 「さぁ、早く♪今日は、自由なんですから!」

 「……自由?」

 「そうですよ?放課後ですし、明日は学校が休みなんですから。パッと遊びましょ!」

 「……遊ぶ……自由……???」


 手を引かれながら、彼女の言った言葉が耳に残る。

やけに残るその言葉は、なんだか酷く私の心を揺さ振られた。

連れて行かれる場所が、子供っぽいと思ってしまうが……。


 「……ふふ」

 「っ!?」

 「何?」

 「キリカさんっ、もっとそういう顔をしましょ!」

 「いきなり何?」


 彼女が急に身を乗り出しながら、そんな事を言った。

キラキラと目を輝かせて、彼女の顔が至近距離になっている。


 「ふふふ、じゃあ何でも無いです♪楽しんでくれてるようで、嬉しいですよ♪」

 「楽しんでる?私が……」


 ふと言われた言葉を聞き、自分の胸に問い掛けるように触れる。

鼓動が脈を打ち、ややいつもより動悸が早い気がしなくもない。

どうしてだろうかと考えていると、彼女がまた私の前に笑みを浮かべて立つのだった。


 「キリカさんっ、行きましょ♪」

 「……ん」


 さぁ、と私へと差し出された手。

私は少し躊躇しながら、彼女の手を握るのだった――。

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