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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『不機嫌メイド』

 休み時間。噴水の見える広場で昼食を取る霧華。

その容姿は幼くても、凛としたその仕草は注目を浴びていた。

紅茶を飲んでいる様子も、目を細めている様子も絵になっているのだった。


 「……注目の的ですね、お姉さま」

 「注目される理由無いのにね」

 「そんな事ありませんよ、お姉さま。お姉さまは、注目されて当然ですから」

 

 隣で紅茶を飲みながら、マリアはそんな事を言った。

霧華は目を細めながら、彼女の容姿を上から下まで視線を流す。

メイド服に身を包んでいる彼女の方こそ、注目を浴びているのでは無いか。

そんな事を思う霧華なのであった。


 「お姉さま、本日の放課後は如何しますか?」

 「今日は予定があるから、マリアは先に帰ってて」

 「へ?」

 「確か、この前の子に誘われてた気がするから」

 「……あ~、へぇ~、な、なるほど……」

 「ん、どうしたの?」

 「い、いえ、別に?なんでもありませんよぉ~?」


 両手を振りながら、何かを誤魔化すようにマリアはそう言った。

首を傾げる霧華は紅茶を飲むが、身体を背けた彼女は思想を繰り広げる。


 「……っ(た、確か、柊美久と言ったかな。お姉さまと放課後デートなんて、万死に値します!)」

 「???」


 メラメラと燃えているマリアを、霧華は困惑するように眺めていた。

そんな中で、霧華と約束を交わした柊美久は笑みを浮かべていたのであった――。


  

 夜。それは月光が夜道を照らす頃。

そんな誰も居ない時間の中で、彼女は一人でビルの屋上へと来ていた。

連絡手段である携帯を耳に当てると、ブツっと電波が繋がる音が聞こえてくる。


 『あら、マリア……定時連絡かしら?』

 「はい、ジェシカ様。今、お時間宜しいでしょうか?」

 『ええ。今はちょうど時間が空いた所ですわ。それで?私の霧華の様子はどうかしら?』


 ビルの屋上から、ある部屋の住人を見ながら目を細めた。


 『……どうしたのかしら?偉く、そうね……不機嫌、と言った所かしら?』

 「っ……わ、分かるのですか?」

 『同じ性別ですから。それで?何か気に食わない事が遭ったのかしら?』

 「はい。霧華様が、本日……標的である柊美久と接触したのですが、何も報告をして下さらないのです。それに帰宅してから、霧華様の様子がおかしいのです。あの女が、何かを吹き込んだ可能性があります」

 『……なるほど』

 「はい。早急に排除する事を提案致します。許可を」

 『駄目よ。こちらの準備が整ってないわ?もう少し待って頂ける?』

 「はい。分かりました…………ちっ」


 プツンと耳元で音が鳴った瞬間、不機嫌そうに舌打ちをした。

視界に入る彼女の事を観察しながら、マリアは一言だけ呟くのだった――。


 「……泥棒猫っ」


 

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