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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『交わされた約束』

 「あの子と何を話してたの?」 

 「何でもありません。ただの世間話です♪」

 「そう。あまり標的との接触はしない方が良い。面倒になる」

 「分かってます、お姉さま」

 

 鼻歌を混ぜながら、スキップしたり踊ったりしながら歩くマリア。

そんなマリアの様子を見ながら、窓ガラスに映る自分の姿を上から下へと眺める。

少しスカートの端を掴んで、くるりと回転してみる霧華。


 「……こんな感じ?」

 

 隣 に居るはずのマリアに問い掛けたが、霧華は首を傾げたまま呟いた。

視界を探ってみたが、マリアの姿は見えずに目を細める。

やがて背後から気配がして、霧華は伸ばされた手を引っ張って隠してたナイフを逆手に構えた。

だがその相手は、焦ったように両手をブンブンと振り回すマリアだった。


 「わー、わー!お姉さま、ストップです!」

 「あぁ、うん。ごめん……つい」

 「もうお姉さまったら、こんな公の場でナイフを抜かないで下さい!もうっ」

 

 頬を膨らませながら、プンスカと怒った足取りで進んで行くマリア。

霧華はその背中を眺めながら、ナイフをスカートの下へと戻して行く。

だが霧華はまた目を細めて、その小さな背中を見つめるのだった。


 「……(あの気配、本物の殺気だった)」


 そう。霧華の背中に近付いた気配は、紛れも無い殺気だった。

それを放っていたのはマリアであり、先に歩くマリアは笑みを浮かべていた。

密かに持ち歩いているそれを袖に隠しながら、少女は無邪気にまた笑うのだった。


 「ではお姉さま?そろそろ帰りましょうか♪」

 「……うん」


 手を繋ぐように促すマリアの手。

それを目を細めながら、霧華は躊躇いもせずに握った。

そしてマリアは嬉しそうに笑みを浮かべ、霧華の腕に抱き着くのだった――。


  

 ――翌日。

マリアは用事があると言って、一人で廊下を歩く霧華。

そんな霧華を狙っていたかのように、再び彼女が目の前に現れた。


 「お、おはようございます!レイフォードさん!」

 「…………ん」


 微かに返事してから、彼女の横を通り過ぎる。

だが彼女は霧華の手を掴んで、まるで追い討ちを仕掛けるように言った。


 「あ、あのっ……今日の放課後、遊びに行きませんか?」

 「???」


 霧華は手を掴まれたまま、首を傾げて問い掛ける。


 「どうして、私?クラスメイトなら、他にも居るでしょ」

 「わ、私はレイフォードさんが良いの!そういう理由じゃ、駄目……ですか?」

 「……はぁ……分かった。じゃあ放課後に」

 「本当に!やったっ!それじゃレイフォードさん、放課後に。絶対ですからね!」


 彼女はそう言って教室に入ると、上機嫌に自分の席へと座りに行った。

霧華も自分の席へ座ると、いつも通りに外を眺めて頬杖をする。

そんな風に外を眺める霧華の事を観察し、望遠鏡と携帯を持つ人影があったのだった――。

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