『無邪気な拒否』
「お姉さま、こういうのはどうでしょう?」
明るい笑顔に手を引かれたまま、ヒラヒラした服を見せ付けられる。
自分に似合わないと思いながら、霧華は渡された服を眺める。
「……これを着るの?」
「はい!お姉さまに似合うと思いますよ!さぁさ、ぜひ試着を!」
「んん……」
背中を押されて、無理矢理に試着室へと入れられる。
閉められたカーテンの向こう側で、鼻歌混じりに待っている彼女。
彼女に渡された服に袖を通し、閉められたカーテンを開ける。
「わぁ、凄くお似合いですよ!流石は私のお姉さま♪」
「これ、動き辛い……絶対殺しづらい」
「お姉さま、オシャレの服を仕事場に着ていくつもりですか?」
「だめ?」
首を傾げてそう言う霧華に対し、マリアは困ったような表情を浮かべる。
いつもゴシック系統の服を着たりしている霧華だが、それは自分が選んだ訳ではない。
彼女のマスターであるジェシカが、趣味で着せているだけのものだ。
用意された服はあっても、自分で購入した事はないのである。
「お姉さま、次はこの服はどうでしょう?」
「またヒラヒラしてる。マリアは着ないの?」
「私はお姉さまの私服の選別中です。その為にお誘いしたのですから♪」
「お誘い?無理矢理じゃなかった?」
「……さ、細かい事は気にしないでドンドン着て行きましょう!」
「あ、誤魔化した」
ヒラヒラとフリルの付いた服。夏に合わせた涼しげな服。ボーイッシュな服。
それぞれを試着させられ、霧華は溜息を吐きながら店の外へと出る。
太陽の日差しが当たった瞬間、冷房の効いた部屋とは違う温度でクラッと身体が揺れる。
「あれ?キリカさん……?」
「――あぁ、えっと、柊美久だったっけ?」
霧華は額を抑えながら、偶然現れた彼女の方に視線を向ける。
向ける視線は気怠い様子で、面倒なのにも遭ったとも霧華は思うのであった。
「お姉さま、お会計終わりました!では次に行きましょう?――お友達ですか?」
「……私に友達はいない」
「え、あ、ちょっと……お姉さま、先に行かないで下さい!」
「…………あ、あの」
立ち去った霧華の後ろを着いていくマリアは、美久に呼び止められて足を止める。
振り返るマリアは、笑みを浮かべて答えるのだった。
「何ですか?」
「あのレイフォードさんの妹さん、何ですか?」
「はい。私とお姉さまは姉妹として、共に暮らしていますよ」
「じゃあもし、図々しいかもしれないけど……お姉さんと友達になりたいって、伝えてはもらえないかな?」
「ん~、それは出来ません」
「ど、どうして?」
美久がそう言った瞬間、マリアは笑顔のまま言うのだった。
冷たく、そして突き刺すように――。
「……あなたは、お姉さまには相応しくないですから♪」
「マリア?行くよ」
「はぁーい、お姉さま!ではこれで……さようなら、柊美久さん。ふふふ♪」




