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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『出来ない表情』

 「キリカ・レイフォードさん、私とお友達になってください」


 握られた手を眺めながら、霧華は首を傾げる。

少女の名前は「柊美久」といい、現在、霧華とマリアの標的でもある人間だ。

だが霧華の事情を知らない美久は、両手で霧華の手を包んで詰め寄る。


 「どうして?私なの?」

 「友達になるのに、理由なんて必要じゃありません!問題は誰とそうなりたいかです!」

 「熱弁してる所悪いけど、私には興味ないかな」


 霧華は手を振り払って、足早にその場を去ろうとした。

だが美久はその手を再び掴み、霧華の動きを止めるのだった。


 「……しつこい」

 「っ!」


 霧華は我慢出来ず、腕を掴んだ美久を睨む。

睨まれた彼女は手を離し、霧華はそのまま溜息を吐いてその場から姿を消した。


 残された美久は霧華の睨んだ目に怯んで、胸の前で自分の手を強く握る。

それは恐怖だ。得体の知れない何かを感じた美久だったが、深呼吸して足を前に出した。

その様子を見ていた彼女は、その霧華と美久の様子を伺っていた。


 「お姉さまに好まれたいのであれば、もう少し非情さを見せなければお姉さまに好まれませんよ?さて、放課後はお姉さまとデートでもしましょうか。ふふふ、楽しんで頂けるかしら?」


 メイド服のまま踊り、まるでバレエをしているような優雅な動きで舞う。

彼女の事を見る視線やひそひそと話す声が聞こえるが、彼女は気にする素振りはない。

それどころか、好きなように踊り続けていた。笑みを浮かべながら、鐘が鳴るその時まで。


 「……という事で、放課後ですよ!お姉さま♪」

 「何がという事なの?」

 「細かい事は気にしないで下さい。やっと邪魔な者が居ないんですから、遊びに行きましょう?」

 「でも任務があるし……」

 

 腕を引っ張られながら、霧華は校舎の外へと出て行く。

この学園は校舎を出るには、外出許可証が必要なのだがマリアは既に持っていた。

放課後になる前に、自分で霧華の分も書いていたらしい。


 「それで、どこへ行くの?門限を越えると面倒よ」

 「大丈夫です。これもお仕事ですから!――さぁ、行きましょう?お姉さま」

 

 ぱぁっと輝く明るい笑顔を浮かべながら、マリアは霧華に手を差し伸べる。

夕暮れに混ざった彼女も輝いていて、霧華には神々しく見えてしまった。

そして思ったのである。


 「…………」

 「お姉さま?」


 自分にはそういう顔は出来ないと――。


 そんな笑顔を作る事が出来ないと、心の中で小さく思うのだった――。

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