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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『差し出された手』

 『――わ、私と友達になりませんか?』


 廊下でそう声を掛けられた霧華は、首を傾げてその手を握る少女を見た。

ショートヘアの茶髪で、霧華と身長はそう変わらない少女。

調理実習中には、自分と同じグループに居た事を霧華は思い出した。


 「……どうして?」

 

 友人という言葉を聞いた時、まず霧華の頭上には?マークが浮かんだようだ。

どうして自分なのかという疑問が先に浮かび、それを解明しようと思ったからである。

だがしかし、少女は霧華の事を全く知らない。いや、正確には詳しく知らない。


 「えっと、柊美久だったっけ?どうして私なの?」

 「……友達になるのに、理由っているかな?」

 「疑問を疑問で返すのは気に入らない。今は私があなたに聞いてる」

 「あ、ごめんなさい。えっと、じゃあ……」


 彼女は霧華の事を伺いながら、言葉を必死に選んでいる。

そんなオドオドしている様子を見兼ねた霧華は、溜息を吐きながら廊下を進み出した。


 「あ、ちょっと待って……!」

 

 慌てた様子で霧華の手を握ったが、霧華は冷めた目で彼女を見た。

そしてまた溜息を吐いて言ったのだった。


 「廊下を塞ぐのは迷惑行為。話があるなら、場所を移動するよ」

 「あ、うん」

 「じゃあお姉さまの邪魔にならないように、私は教室でお待ちしてますね?」

 「ん?マリアも来るんだけど?」

 「はい?それはこの方に失礼だと思ったのですが……」


 マリアの言葉を聞いた霧華は、少し考える素振りをしながら彼女を眺める。

見た目は至って普通なのだが、どこかパッとしない地味な女子生徒。

だがしかし、日本に霧華が居る理由である以上……無碍には出来ないのだろう。


 「分かった。じゃあマリア、また放課後で」

 「はい。仲良く出来ると良いですね!」

 「……?」


 霧華は首を傾げて廊下を進みだした。

その後ろを着いて行く彼女の様子は、どこか小動物のようだった。

それを思いながら、マリアはメイド服のスカート翻して教室へ向かう。


 「お姉さまはさて、殲滅か撃退か……どちらを選ぶのでしょうか?くふふ♪」


 マリアは笑みを浮かべながら、自分の教室へ向かっていく。

スカートを摘みながら踊る彼女は、ある意味で注目を集めていた。

そんな中で、霧華は人の少ない場所へと移動を完了していたのだった。


 「それで、友達になるっていうのは……どういう事?」

 「どういう事って、友達は友達だと思うけど……」

 「その友達ってのが、良く分からない。友達って具体的に何すればいいの?」

 「えっと、困った時に助け合ったり、分からない事は教えあったり、一緒に帰ったり、遊びに行ったり……色々と出来る仲間、みたいな感じかな」

 「……ふーん」


 霧華はそれを聞いたが、ピンとは来ていなかった。

それどころか、目の前の彼女の事を観察していた。

何故なら標的だから、それしか当てはまる理由はないのだった。


 「じゃあ私が困ってたら、あなたは助けてくれるの?」


 悪戯心が浮かび、思ってもいない事を彼女に尋ねる。

答えられないだろうと思っていた霧華だったが、彼女は迷う事無く答えを言ったのだった。


 「助けるよ?だってそれが友達だもん」

 「…………そう」


 霧華は目を見開いて、彼女の事を見据えた。

彼女は何食わぬ顔をしたまま、霧華に再び手を差し出したのだった。


 「キリカ・レイフォードさん、私と友達になってください」

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