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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『初めての友人』

 私が彼女と出遭ったのは、調理の授業が行われている時だった。

短い自己紹介をした後、無表情な彼女は淡々と野菜を切っていく。

教科書を見ながら切っていくその仕草は、とても落ち着いている様子だった。


 「レ、レイフォードさん、上手だね」

 「なにが?」

 「何って料理、料理作るの好きなの?」

 「……どちらでもない」


 彼女はそう言って、教科書通りの調理方法で進めていく。

一つも間違わない手順と手際を見ていると、本当にどちらでもないのか疑ってしまう。

だけど彼女は、早々に作り終わると一言だけ言って教室を出てしまった。


 「……私の役割分は終わったから、後は適当によろしくね。それじゃ」

 『あ、ちょっと……レイフォードさん!?』


 呼び止めようとする教師の声を無視して、彼女は出たすぐ近くで本を読んでいた。

調理が終わって食事をしようという時だが、彼女が参加する事は無かった。

ただ一人で本を読んで、廊下の奥へとゆっくり消えてしまったのである。


 『なぁにあれ、何様なの?』

 『少し頭が良いからって、調子に乗ってるんじゃない』

 「…………」


 クラスメイトの中から、そんな事を呟く声が聞こえてくる。

雰囲気が悪くなるのを感じて、私は一人でに彼女の様子を伺いに校内を探した。

何処に居るのか不明な為、闇雲に探しながら校内を歩いていく。


 「お姉さまっ!休み時間にご予定はありますか?」

 「別に無い」


 ふと聞こえてきた声に反応し、何故か隠れながらそれを観察する。

メイド服みたいに改造した制服を着用している少女が、彼女の腕に笑顔で抱き着いている。

そしてその彼女は、何食わぬ顔でその少女の頭を撫でている。振り解く素振りもない。


 「……お姉さま、何かお飲みになりますか?」

 「必要ないわ。早く帰りたいわね。ここはつまらない」

 「…………」


 私はその言葉を聞いた瞬間、気が付いたら体が動いていた。

何も考えていなかったはずなのに、その顔を見た瞬間に動いてしまった。

私は咄嗟に彼女の手を握り、振り絞ったような声で一言だけ言うのだった。


 「わ、私と友達になりませんか?」

 「…………なに?」


 手を握られた彼女は、目をぱちくりしながらこちらを見ていた。

廊下の中で目立った私は、ただ彼女の目だけを見ていた。

その表情は私が彼女の初めて見る表情でもあった。とても困惑していたのであった。


 「……とも、だち?」


 これを言っていた時、私は多分……我慢出来なかったのだろう。

つまらないと言っていた彼女は、本当にその言葉通りの表情をしていたのだ。

だから私は動いたのかもしれない。彼女に笑ってみて欲しかったから――。

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