『少女、対面す』
「……っ!」
「予備動作が大きい。それじゃ、駄目」
「きゃっ!?」
小さく悲鳴が漏れ、彼女は地面に尻餅をつく。
これは今後、必要になるかもしれないと頼まれた事だ。
最初は反対したけれど、彼女が望むというのなら仕方の無い事ではある。
「そんなんじゃ、役に立たない。続ける?」
「続けます。お姉さまの役に立ちたいので、まだ……お願いします」
「分かった。それじゃ……行くよ」
「――っ!?」
地面に大の字になって、呼吸を整える彼女。
その様子はかつての私に似ていて、それでいて全く似ていないと思う。
私は私であり、彼女は彼女でしかない。所詮はそういう事だ。
所詮はそういう事で、結局は私は全く違う人種だという事が分かってしまう。
「お姉さま、ありがとうございました。また明日も、お願いしても良いですか?」
「……任務に支障が出なければ、構わない」
「それはもちろんです!それでは学園へ向かいましょう。朝食に致しますね。お姉さまは先に汗を流しては如何ですか?」
「そうする。これで制服は、息苦しい」
「それでは、ごゆっくりと」
彼女に見送られて、私は浴室へと入る。
全寮制という話だったが、この時間帯では起きてる者も見当たらない。
日本というのは、随分とのんびりしている国なのだなと思う程だ。
まぁ人によってはという個人差はあるだろうが、だがそれでも平和過ぎる。
これではあの国に居た私が、私の価値観が惨めに感じてしまう。
「お姉さま?食べないのですか?」
「…………食べてる。だから安心していい」
「そうですか。ところで今回のターゲットなのですが、この方だそうです」
そう言いながら、一枚の写真を取り出す彼女。
彼女が作った朝食を食しながら、私はその写真に写っている人物を眺める。
「――この子が今回の標的」
「何か気になる事がありますか?お姉さま」
「いや、とっとと終わらせて帰ろう。見た所、簡単そうな相手」
「そうですねぇ。お姉さまが手を出す事は、必要無いと思いますけど」
「必要無いのなら、私に依頼は来ない。必要だから来る、それだけ」
私の言葉に嘘は無い。
元々、私を必要とする者は居なかった。
だからあの人に会ったあの日から、私の人生は大きく変わった。
「…………」
「それではお姉さまっ、学園へ向かいましょう!」
「引っ張らなくても行く」
小さな背中を眺めながら、私は通う事になっている学園へ辿り着く。
もう挨拶は済ませているし、任務以外の事には極力干渉しない。
それが暗殺業界の掟であり、変えようのない鉄則である。
そう思っていたのだが、私はその学園の授業で標的と遭遇したのであった――。
「柊美久です。お互いに頑張りましょうね!」
「キリカ・レイフォード。よろしく」




