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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第三章【籠の中の小さな鳥は】
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『少女、出会う』

 「イギリスからやって来ました。キリカ・レイフォードといいます。宜しくお願い致します」

 「同じくイギリスから参りました。マリア・スカーレットです。お嬢様共々、仲良くして頂けると嬉しいです。私は授業には参加しませんが、何か出来る事がありましたらお申し付け下さい。宜しくお願いします」

 「…………」


 長い挨拶だと思いながら、霧華は隣でニコニコとしている彼女を見る。

着いて来るとは聞いていたが、まさか仕事先にまで着いて来るとは思っていなかったのだ。

それもそのはず。彼女が仕事の内容を聞いたのは、日本へ到着した直後だったのである。


 「……どうして言わなかったの?」

 「聞かれなかったので。それにお姉さまがちゃんと出来るよう、ジェシカ様からも言われてるのですよ。雇い主の申し出にはきちんと応えないと、仕事としてやっていけませんから。という事でお姉さま、覚悟して下さいね?ふふふ」


 そう言って、彼女はその主人を放って置いて廊下を早々に歩く。

周囲の視察は暗殺業の基本と教えたけれど、別に彼女がやる必要は無いと思う。

そう思いながら、溜息と共に廊下を歩く霧華。

そんな霧華は考えてもいなかっただろう。彼女自身が、その学園では非常に目立つ事を。


  ◆


 廊下を歩いていた私。その私の視線を奥で、キョロキョロとしながら歩く一人の女の子。

制服を着ていても、この学園の者ではない雰囲気を纏っている事が理解出来た。

見た事のない顔立ちや空気。それらは転校生という存在を大きく際立たせる。

まるで太陽の光のように眩しく、自分が影であるかのように……。


 「綺麗な子。でも何処か、寂しそうな子……何だろう?あの子は」

 『何をボーっとしてるのさ。ほら、次の教室に行こうよ』

 「あ、うん」


 友人に呼ばれ視線を外して、もう一度視線を彼女に戻した瞬間だ。

女子というのは時に、人一倍に視線を判別する事が出来る事があると聞く。

恐らく彼女は多分、それが人よりも数倍高いのだろうと思う。

目が合ったのだ。廊下に居る人で視界が邪魔されるのに、目が合ったのである。

そして名の知らない彼女は何も言わず、後ろに居る誰かに呼ばれて廊下の奥へと消えた。


 「…………」

 『どうしたの?美久(みく)?』

 「ん?ううん、なんでもない。行こっか!」


 ほんの数秒間の事でも理解出来た。

それが彼女との出会いだったが、私は今でも鮮明に覚えている。

これが私の始まりであり、終わりでもあるという事。

今この瞬間、走っていたレールの分岐点が切り替わる音が響く。

大きく、そして……その道が不安定な事も、何もかも私は覚えているのだった――。


 

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