20/115
プロローグ
その出会いを『運命』だと思ったのは、いつ頃の事だろうか。
目の前にある名簿には、かつて会った彼女の名前が記されている。
『……霧華?貴方は一体、何がしたいの?』
その言葉を呟く彼女の表情は、とても悲しそうな表情を浮かべていた。
目を閉じる度、その出来事が映像として目の前に表れてくるのだ。私とした事が滑稽な事だ。
「うるさい。私の何が分かるっ、何を知ってるのっ!」
『――――!!』
霞んでいく景色の中で、私と彼女が言い争っている。
生まれて初めての言い争いだったかもしれない。今となっては、良い思い出である。
人々の雑踏に塗れた世界で、太陽の光を浴びる一つの身体。
私は私の歯車を動かした出来事を思い浮かべて、その青い空に手を伸ばす。
これから私が語るのは、私の中にその感情が初めて芽生えた物語である――。




