表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第二章【可愛らしい獣は、毒の牙を隠す】
13/115

『灰色の目をした男』

 ルクメールという男から、依頼を受け取った霧華。

その依頼を完遂するべく、一旦彼女は準備に取り掛かろうと帰る事にした。

ついでに少女の様子も……。


 「ドコ行くのさ?」

 「一旦戻る。準備が必要でしょ?」


 霧華を呼び止める少年は、少し考えてから彼女の行為を肯定する。


 「分かった。なら30分後に広場で落ち合おう」

 「貴方だけで先に依頼を終わらせてくれても良いのだけど?」

 「ご冗談。僕は多忙でね。それにこの依頼は君と僕とで引き受けた依頼だ。完遂しなければ、あの人に怒られちゃうよ?」

 「それは、困る」


 霧華は溜息を小さく吐いて、やがて観念したかのような表情を浮かべる。

それを見た彼は、やれやれと呟きながらその場を後にしたのだった――。


  ◆◆◆


 「ん?あれは……?」


 ふとした帰り道だった。

警察のパトランプの点滅と一緒に、それを囲むように人集りが出来ている場所を見つけた。

恐らくは、今朝のニュースにあった事件だろう。

私は少し気になり、ちゃんと見える場所まで近寄る事にしたのだが……。


 「んんっ……くっ、見えない」


 飛び跳ねても、背伸びをしても、周囲に居る大人たちの所為で何も見えない。

やがて諦めて帰ろうとした時、知らない大人に声を掛けられた。


 『お嬢ちゃん、あまり見ない方が良いかもよ。子供が見るにはあまりに惨過ぎる』

 「…………」


 私は改めて現場に近寄ると、その大人は困ったように見える位置を空けた。

人集りの中には子供の姿は無い。それもそうだろう。

誰が好き好んで死体現場なんて見る趣味の子供がいるのだ。そして見せたい親も居ないだろう。

でも私は、私が見たいから見るのだ。

悲惨な現状が広がっていても、それは自己責任という事だ。問題は無いだろう。


 「??」


 一般人が立ち入らないようにバリケードがあり、その周囲にはブルーシートが敷かれている。

そしてその中には、何かを包んでいるようなブルーシートもあった。

……あれが、死体だろう。そう思った。

だが私の感じた違和感はそこではなく、その警察の行動内容にあった。

野次馬の近くにあった所為なのか、死体を包むブルーシートが破けてしまっているのだ。

私はしゃがんで、それを見つめる。


 「…………」


 見えているのは腕だけで、他には何も見える事はなかった。

けれどあれは、どう見ても刺殺された後に見えたのだ。ニュースと少し違う。

どうして……?


 『――これで私も、死者の仲間入りか。あの子は何処へ?何故私に……』


 その場から離れようとした瞬間だった。

うな垂れたように佇み、覇気も無く呟く大人を見つけた。

肌が青白く、具合の悪そうな表情を浮かべている。

まるでこの世界の住人ではないかのように。生者ではないように……。


 『あぁ、あの子は一体何処へ?何処へ?何処へ……』


 そう呟きながら、私の横を通り過ぎていく。

ユラユラと左右に揺れながら、暗い夜道をゆっくりと進んでいく。

徘徊する死者のような雰囲気だが、その姿を見ている者は誰も居なかった。


 そして私は屋敷へ帰り、ボロボロになったぬいぐるみを持った少女に出迎えられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ