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【完結】奴隷少女は、笑わない  作者: 三城谷
第一章【全ては自分の為にした事だ】
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プロローグ

 雨が降っている。重たい雨粒が、地面を叩く音が聞こえる。

その雨の中で、一人の少女は立ち尽くす。自分の足元に転がるそれを見て……。


 「……もう動かないんだね?」


 少女はそう呟き、小さく口角を上げる。だがしばらくして、溜息(ためいき)を吐いた。


 「……だめ。全然笑えないなぁ。楽しかったけど、貴方との思い出は軽すぎて、薄いもの」


 少女はそれだけ言って、その場から姿を消した。

残されたそれは、雨に打たれ、徐々に赤い水溜りを作っていく。

残されたそれは動く事無く、明日の情報誌にただ載るだけ。

首筋の頚動脈(けいどうみゃく)を切断され、その他に外傷が数ヶ所。腕や足にも切り刻まれた(あと)がある。


 少女はただ笑える環境を欲しがるのだ。だがそれは、ただの望みであり、羨望(せんぼう)

羨む事しか出来ない少女は、自分の出来る事でそれを補おうとしたのである。


 彼女の得意な事といえば、『()()()()()』という行動そのものである。


 「あら、霧華。おかえりなさい」

 「マスター、ただいまです。下さった指示は、クリアですか?」


 真夜中の道を進んでいく途中に、まだ明るい建物の中へと入る。

するとそこには、紅茶を優雅(ゆうが)に飲む女性の姿があった。赤いドレスに身を包む。

まるで全身が全て、『赤』という一色で出来ているかと勘違いするほどに……。


 「霧華は良くやりましたわ。雨に濡れたままでは風邪を引きますよ?すぐに湯浴みを済ませなさい?明日は外出しますわよ」

 「どちらにですか?マスター」


 彼女は紅茶を飲み干すと、不敵な笑みを浮かべて少女を抱き締める。

そして少女の頭を撫でながら、耳元でニヤリと笑って呟いた。


 ――とても楽しい所よ、と。


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