『一週間クラフト』チュートリアル編2
「それにしてもゴブリン強すぎじゃね」
まだゴロゴロしている紫恩にとりあえずボヤく。
「お兄ちゃん防具も無しでレベルも1だったじゃん、それで特攻したらそうなるよ」
レベルあったのかよ。
「うぐっ、紫恩は最後どうなったんだ?」
土ぺろしてたから把握できてないんだよな。
「粘ったけどピカちゃん壊れちゃったよ」
「すげえ、あの中でやられなかったのか」
「ふふん、レベルも上がったから次は楽になるよ」
「レベル引き継ぎなんだな」
「このモードはね、低難易度でレベルを上げて高難易度クリアを目指すんだ、もちろん毎回やり直しなモードもあるよ、他にも」
長そうだから適当に聞き流してしまった、まあ、大丈夫だろ。
「じゃあお兄ちゃん続きやろうよ」
「そうだな」
まだ午前中だしな。
今度は近くに林があるマップだった。
「紫恩、今回はラッキーだな」
「うん、ホントは見えるとこに山があるといいんだけどね」
そうなのか?逆落としとかされそうだけど。
「まあお兄ちゃんに頑張って探してもらおうかな」
紫恩さんまだ怒ってます?
とりあえず木材を集めて防衛は紫恩に任せる事になった。
「お兄ちゃん行ってらっしゃい」
『サボるんじゃ無いわよ』
柵でピカちゃんを囲む紫恩に見送られ俺は山を探す事になった。
すっかり暗いのに松明だけで放り出されたんだけど。
まるで洞窟の中の様に暗い、松明の明かりが無いと足元もよく見えない。
夜目が聞かないのかよ、まったく、迷子にならない様に松明を地面に挿しながら暗闇を慎重に進む。
点々と松明で軌跡を残しながら歩く、振り返ると紫恩のいる場所がかなり遠くに見える、なんか妙に明るい気がするけどまあいいか。
明るくなってきた、やっと見渡せるんだが、数本木があっただけで何もなかった、そこに突然声が聞こえる。
『お兄ちゃん一回帰って来て』
まあ、声というか紫恩からのチャットんだけどな。
「なあ紫恩隣にいるんだからチャットは要らないだろ」
「雰囲気だよお兄ちゃんふいんきじゃ変換できないんだよ」
「いやまあ変換するならふんいきと打たないと、それもどうでもいいよ」
明るくなったから駆け足で帰る、あんまり遠出できて無かったな。
「お兄ちゃんお帰り」
『ほら早く働きなさい』
なんだろう、ピカちゃんの周囲が掘り下げられ、柵がその内側と外側を囲ってある、さらに外壁に木の壁があり、また掘り下げられている、しかも深いから落ちたら自力じゃ登れそうに無い、ついでにピカちゃんの下に松明。
入り口が一つ、まさに最終防衛拠点になっていた。
「凄いな」
「えへへー、最終防衛拠点火炙りの陣だよ」
火炙りにはしなくてよくないか?
「じゃあお兄ちゃん、鉄が採れないかもしれないから木で装備作っとこうよ」
「お、おお」
紫恩に逆らってはいけない気がした。
紫恩は手馴れた様子で装備を用意する。
「お兄ちゃんは剣と鎧と弓でいい?」
「おう、遠近完備だな、あれ?紫恩は棒?」
「うん、レベル有るから魔法にポイント振ったんだ、『アイスニードル』と『プラズマボール』だよ」
見せてもらった、『アイスニードル』は氷のトゲが数本打ち出された、もっと鍛えたら沢山出て楽しいらしい、俺は狙わないよな?
『プラズマボール』は当たった敵を中心にビリビリして軽くスタンさせるらしい、俺は巻き込まれ無いよな?
なんか俺貧弱じゃね?
「お兄ちゃんは前衛するなら『ヒーリング』を取ると便利だよ」
「俺はレベル1だぞ」
「え?最初1ポイントあるでしょ」
あった、俺は迷わず『ファイアーボール』を選んだ、鍛えたら(まあポイントを振り分けるんだが)爆発炎上するらしい、楽しみだ、紫恩にはまだ内緒にしとこう。
それからは探索に四方へ一晩づつ移動したが山は無かった。
「さあ、お兄ちゃん二回目の防衛だよ、二回目の」
「ああ、腕がなるぜ」
「…………」
「前回はすんませんでした」
いきなり呼び込んで瞬殺された前回、ずっと土ペロ(死んだまま)してたのを根に持たれてる。
「今回は作戦があるよ」
「紫恩指令、お願いします」
「ふむ、私は上から魔法を使います」
「はい」
「お兄ちゃんは入り口から入って来るゴブリンを殴ってください」
「は、はい」
「あとは気合いで頑張って」
「…………」
「そうそう、ピカちゃんの近くは自動回復するからヤバかったらさがってね」
囮ですね、わかりました。
俺の罰は紫恩の肉壁になることみたいだ。




