表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

第6話 エロジジイ再び

「今日は疲れた。」


 二人の仲間が風呂に行って一人になった部屋の中で疲れた男が一人黄昏ている。窓のサンに腕を乗せてぼんやりと外なんぞを見ている。


「今日1日じゃ記憶も戻らないか。」


 知識はちゃんとあるのは分かったんだけどな。どうも記憶は戻らない。剣を握れば何かが思い出せるかとも思ったが、そんな事はなかったしな。そもそもヒノキの棒だから思い出せなかったという可能性も砂粒くらいの大きさでは存在するのだろうけどな。


「うん? 窓の外に誰かいるぞ。なんかコソコソしてるな。何してるんだ?」


 建物の中から行くと見失いそうだな。

 窓から行くか?

 俺は窓から身を乗り出して一気に3階分の高さを飛び降りる。


「おい、あんたは何をしてるんだ?」


 ビクリと人影はかすかに反応する。


「何って散歩ですぞ。怪しいところなんてないですぞ。」


 よくよく見てみると、それは闘技大会の事を教えてくれた爺さんだった。


「さっきの爺さんじゃないか。さっきは助かったよ。」


「それは良かったですぞ。これも女神様のお導きというものですかな。」


 あの女神がそんな細やかな仕事をしてるとは思えないけどな。それとも灰色の脳細胞とやらでこの自体を想定してたのか? うん、無いな。


「お連れの美しい女性達はどうしたのですかな?」


「2人で風呂に行ったよ。」


 ギラリ!

 爺さんの目が海の魚を狙う猛禽類のように鋭い目になったような気がする。


「行きますぞ勇者殿! 我らの栄光は約束されましたぞ!」


「ちょっと待て爺さん。おいおいまさか覗きに行くつもりなのか?」


 老人には見えない健脚でもって爺さんが疾走する。その走るフォームは野生の獣を連想させる見事なもので、足音は全くと言っていいほどに響いてはいない。目的が目的じゃなかったら素直に賞賛していただろう。


「ストップだ爺さん。風呂なんて覗いたらダメだ。」


「何を言っているのですか、男子に生まれたからには風呂を覗かなくてどうするというのですかな? それも勝利が確約された風呂ですぞ。あなたも仲間の事は知っておかなくてはならないのではないのですかな?」


「堂々と言い切るなよ! 俺は知るべきじゃない事までは調べないんだよ。」


 スタートダッシュに出遅れたのがきついな。だが追いつけないほどじゃない!


「桃源郷を見るまでは捕まるわけには行きませんぞ!

 主よ、その光を我に貸し与えたまえ

[フラッシュライト!]」


 爺さんから眩い光が放たれて俺はたまらず目をつぶってしまった。教会の司祭やシスターがよく使う白魔法か。なんの、これしきで止まると思うなよ。


「チョッ、危ないですぞ。止まりなされ。」


 止まるのはお前だエロジジイー!

 ドゴン!

 ここは止まるべきだったと、少なくとも視界が回復するのを待つべきだったと後から思い返すと馬鹿そのものだった。俺はよりにもよって露天風呂の壁に激突してぶち抜いてしまったようだ。


「チョッ、クソ勇者何してるのよ。風呂に突撃とかあんた馬鹿じゃないの?それとも股間に二つついてる方が脳ミソなのかしらね?」


「待て待て、これは事故なんだ。覗きをしようとしていたエロジジイを追ってたら勢い余ってこうなったんだ。悪気はないんだよ。」


 目は回復の兆しがあるものの開けるわけにはいかず、結局のところは塞がれたままだ。それでも語調から怒ってるのがわかる。


「お兄ちゃんだーーー!お兄ちゃんもお風呂入ろー!」


 ゲフゥ!

 ドーンとファフィーのものと思われる頭が鳩尾に突き刺さる。凄まじい激痛で俺は木の葉のように吹き飛び空いた穴から外に弾き出される。。


「ダメよファフィー。こういう場所に男の人は入れちゃいけないのよ。

 それとクソ勇者、あんた以外には誰にもいないわよ。

 嘘をついてんじゃないわよ。」


 なにぃぃぃぃぃ。

 辺りを見回しても爺さんの姿はなく、見えるのは黒いフードで体を隠すマイヤと鱗の鎧を付けているファフィーの姿だけだった。体の一部と言っていたからフードや鎧はすぐに出せるのだろうか?


「あのジジイ逃げやがったのか?」


「覚悟はいいかしらクソ勇者。あなたのウジが湧いている汚い頭を洗ってあげるわ。喜びなさい。

[ウォーターボール]」


 マイヤの手のひらに風呂のお湯が集まり、凄まじい勢いで水の玉が俺の頭をおそう。その衝撃で俺は意識を手放した。綺麗な星が散ったが夜空ではないだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ