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第2話 勇者達は金で解決することを覚えた!

「お兄ちゃんお兄ちゃん、ここ人がいっぱいだよ!」


「ハァハァ、街だからな。無人だったら廃墟だよ。」


 追いかけっこ(デスゲーム)は街に到着することでファフィーの興味が移って終了した。女神様に貰った袋はやたら重いし街まで全力疾走だし、とっとと休みたいもんだ。ちなみに追いかけた張本人のファフィーはまだまだ元気。マイヤも空を優雅に飛んで涼しい顔を崩してはいない。なんというか理不尽だ。


「重そうな荷物を持ってご苦労様ねクソ勇者。」


「全くだよ。いったい何が入ってるんだ?」


 どうしても気になってしまいそそくさと邪魔にならない路地に移動して袋を開けるとそれは


「!!!!!」


 言葉に詰まる。

 …………なんだと!

 袋にぎっちり詰まったそれは価値のあるものだった。価値そのものだと言っても過言じゃない。


「これは……………女神のやつも豪気なことをするわね。」


「ピッカピカだよ!女神のお姉ちゃんって凄いんだね。」


 2人も驚いている。それは当然だろう。

 中身は金貨なのだから。この大きな袋が破れてしまいそうな程にぎっちり詰まった金貨なのだから。


「クソ勇者!買い物に行くわよ!」


「宿だ。俺は良い宿に泊まって疲れを癒したいんだよ。」


 ハッ!これから買い物とか笑っちまうぜ。

 膝が。

 プルプルする膝をなんとか抑えこむ。


「そうね。仕方ないわね。じゃあ宿に行きましょう。丸腰だけど勇者一行として休みますって言うわ。この布の服の人が邪神を倒しに行くって言うわ。武器をないがしろにしているけど勇者ですって言うわ。私は武器を買いましょうって言ったのに聞き入れてくれないって泣くのだわ。」


 なんてプライドをチクチクする攻撃なんだ。しかも嘘泣きまでして苦労人面のおまけ付きじゃないか!


「お前は元魔王としてのプライドはないのか?」


「フフフ、クソ勇者を貶めるためなら二束三文で売り飛ばしても一向に構わないわ!」


 プライド薄いなおい!


「お買い物行くの?ファフィー買い物したことがないから買い物したい!」


 キラキラした目でこっちを見てくるファフィー。ハァァ、ため息が漏れる。


「仕方ないな。行くか。」


 地に倒れ力尽きようとも勇者は立ち上がって戦わないといけない時があるそうだ。それが今だって話だろ?

 誰かそうだと言って欲しい。


 そして俺達は買い物に繰り出した。


 武器・防具・魔法具の店アドン商店


「欲張った感じの店ね。」


「ここで1通り揃えられるのか?」


「大きい建物だよ!ここで買い物するの?」


 アドンの店は立派な建物で中に入っても所狭しと並んだ品物たちが外から見た印象を裏切りはしなかった。


「いらっしゃいませ。ようこそアドンの店へ!今日はどんな物をお探しですか?」


 中年の男性店員がにこやかに近づいてくる。


「武器を見たいんだがいいのあるか?」


「見た感じ駆け出しですかね?でしたらこちらの剣が扱いやすいですよ。」


 なるほどな。でもなんかショボいし直ぐにダメになりそうだ。どうやら俺の失われた記憶の中には武器に対する見識が少しはあるようだ。


「これなんか凄そうだよ!アハハハハ!」


 ブンブンと大振りな斧を振り回すファフィー。


「あれは大巨人の斧!なんであんな小さい子が振り回せるんだ。大人が十人がかりでやっと運べる代物なんですよ!」


 驚く店主。


「この杖は!

 先々代の魔王が使ってたものよ。まさかこんな所にあるなんてね。」


 何やら古めかしい杖を手に何かを確かめるマイヤ。


「アレを最初に見つけるなんて!この店一番の商品ですよ。しかも弱い者なら素手で触ることすら危険な代物なのにあんなにアッサリとなんて。」


 もはや驚くことも出来ず呆然とする店主。


「これの固有魔法は何かしら?ちょっと試してみようかしら?」


 何やら分からないことをぶつぶつと言うマイヤ。

 それにしてもみんな凄いな。武器を見つけるの早いだろう。


「ファフィー、その斧が気に入ったのか?」


「うん!これなんかいい!」


 ブンブン振り回しながら答える。


「ならそれをファフィーの武器にするか。」


「やったぁぁぁ!」


 ブン!バキィ


 バキィ?嫌な音がした。


「この建物の大黒柱が!」


 あわわわと焦る店主。


「ファフィー斧を振り回すのをやめるんだ。店が壊れる。」


「えーーー。まだまだ物足りないよ。」


「それはファフィーのものなんだからまた今度広いところでな。」


「わかった。また今度にする。」


 わかってくれてよかったよ。


「店に傷つけてしまってすまない。」


 どこぉぉぉん!

 猛烈な爆発が俺達に襲いかかる。

 何事だ。


「爆発の魔法だったのね。これは失敗したわ。」


「お前もやらかすのかよ!」


 爆発の魔法により店内は酷い有様だ。そしてギチギチと不気味な音がする。なんというかお店が崩れてしまうカウントダウンみたいな感じの音だ。


「というか店が本当に崩壊するぞ。みんな外に出ろ!」


 大黒柱と爆発の影響をもろに受けた柱が店を支えきれなくなり崩れ落ちる。惨劇はあっという間だった。


「私の店が、どうしてくれるんだアンタら!私の全てを一瞬で台無しにしたんだぞ!」


 怒れる店主。どうしよう?

 目で2人の仲間達を見る。


「ここは私に任せなさい。クソ勇者には出来ない交渉というものをやってあげるわ。」


「頼む。」


 やるのは交渉じゃなくて謝罪だと思うが秘策があるようだから任せよう。


「これ使うわよ。」


 金貨の袋を引きずって店主の元へ行くマイヤ。


「悪かったわね。あなたの店をこれで買わせてもらうわ。」


「へっ?こんなにですか?これなら新しい店を作り直してもお釣りが来ますよ。」


「それじゃあ今度は壊されない店を作りなさいよ。」


 現金なもので大量の金貨が自分のものになるとわかった時点で店主の機嫌は治ってしまったようだ。これでなんとかなったか。


「まあ、こんなものね。これが魔王の力よ!」


「金の力だろ。」


「勇者の金を使い込むのは魔王の特権よ!」


 そんな話は聞いたことがないともあれ武器選びはなんとかなったか。

 うん?

 俺の武器が決まってなかった。


「俺の武器がないんだが買い物の続きは出来ないよな?」


「無理ね。そもそも金もないのよ?お店があっても出来ないわ。」


「宿で休むことも出来ないのか。」


 勇者一行の旅はこうして最初の難問に突き当たるのだった。

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