第1話 旅の始まりはデスゲーム。(勇者のみ)
そこは丘の上だった。
正確には教会のあった丘だ。その頃の名残は朽ちた石壁だったものが僅かに残ってるだけだ。それも背の高い草で隠れてしまっている。
日は中天を過ぎたあたりだ。野宿する用意もない現状だと街に行きたいところだ。衣食住があってやっと先の事を考えられるってものだ。
「スーハー、空気が美味しいわ。シャバの空気は最高ね。」
薄い胸に思いっきり空気を吸い込みマイヤが嬉しげに言う。
「お外だお外だ!ライルお兄ちゃんあそぼー!」
ドオォンと俺に突っ込んでくるファフィー。胃の中身が逆流しそうな衝撃が俺の身体に襲いかかる。
「ファフィー、遊ぶのは待ってくれ。まずは街に行こう。こんな所で野宿するのは良くない。」
「えーー、遊びたい遊びたい。」
だんだんと地団駄を踏むファフィー。
それにしても揺れるなー。何がって?
ファフィーの子供っぽい容姿を裏切ってる胸部だと思ったか?違う!そこは緑の胸部鎧で守られているから揺れたりしない。
じゃあ何が揺れてるかって?
「地面が揺れるだろ!地団駄を踏むな!」
そう、地面だ。大地が鳴動しているんだよ。災害か!
「フフフ、遊んであげないと収まらないわね。どうするの?」
この魔王様は楽しそうに言ってくれやがる。
「今考え中だ。」
「そう、仕方ないわね。私が何とかしてあげるわ。」
自信満々な感じだ。流石は元魔王。知恵も超一流って事なのか?
「ファフィー、ライルお兄ちゃんと遊びたいの?」
「遊びたい!」
なんだ?どうする気なんだ。
「なら追いかけっこしましょう。私とファフィーでライルお兄ちゃんを捕まえて地面に叩きつけましょうね」
こくこくと頷くファフィー。
おいおい待て待て待て待て、それはアレか。デスゲームか?それ実行されたら死ぬよね?
「おい、ちょ」
「さあ、くそ勇者!
街はあっちよ!死にたくなければ走りなさい!スタートよ!」
チクショーーーー!
旅の始まりがこれかよ!
「お前ら本当に勇者の仲間かよ!」
「不本意だけど敵ではないとだけ言っておくわ!」
「一番タチが悪いやつじゃねえか!」
死にものぐるいの旅が始まった。彼らの行く手には何が待っているのかは誰も知らない。旅は始まったばかりなのだから!
とりあえずは街にたどり着けるかはライル次第だというのは確かなことだ。